難解なバカ

エリー.ファー

難解なバカ

 男が嫌いだ。

 まず、頭が悪い。女を犯すことしか考えていない。気持ち悪い。

 肩書が好きだ。

 とにかく飯が食べやすくなる。人生の難易度を下げることができる。

 小説が好きだ。

 言葉だけで紡がれる世界には高潔さが残っている。

 男が好きだ。

 世界を支える存在であり、女性を丁寧に扱うから。

 肩書が嫌いだ。

 実力を見えにくくする霧としての機能しか果たしていない。

 小説が嫌いだ。

 楽しむのに我慢と大量の時間が必要になる。

 小説が嫌いだ。

 バーバルアートの限界を感じてしまうから。

 麻雀が嫌いだ。

 ルールが複雑過ぎて理解できない。

 麻雀が好きだ。

 ルールが簡単ですぐに遊べる。

 トランプが嫌いだ。

 赤と黒だけじゃなくて、青や緑も欲しい。

 トランプが嫌いだ。

 カードで指を切ってしまったことがある。

 ギャンブルが嫌いだ。

 どんな形であれ、誰かを不幸にする可能性が高い。

 差別が好きだ。

 社会が純化していく。

 差別が嫌いだ。

 社会が純化しない。

 差別が好きだ。

 差別をする側であれば、無条件で優秀であると見なされる可能性が高い。

 差別が嫌いだ。

 社会の可能性を潰しているだけだ。

 性的消費が好きだ。

 一つの文化であり、エンターテイメントだ。

 性的消費が嫌いだ。

 誰かの涙の上に成り立つ文化に何の価値があるのか全く理解できない。

「僕をどこかに連れ去ってよ」

「連れ去るわけにはいかないよ」

「月光と共に歩む人生があります」

「今がどんなに辛くても」

「独り言から始まる奇跡があってもいい」

「前線」

「避雷針に感謝を捧げる夜もあるべきだ」

「賭け事から始まる」

「真夜中の逃走劇」

「メタルの紅茶って、あるんですかね」

「鉄の味がするアップルジュースを飲んだことがあります。最高でした。また飲みたいです」

「血飛沫こそ、サプライズなのです」

「真っ白にしてくれませんか」

「大荒れから始まる凪。戯れでしかない」

「変化を頂けますか。人恋しさに泣きぬれる」

「この宇宙には、私しかいないのです」

「寂しさが私を抱きしめてくれる夜になってしまいました」

「男女の差について語るのは重要なことです。それが良い、悪いに関わらず」

「特に悩んだこともない人生でありました」

「トリガミって何ですか」

「白く塗って、殺してください」

「元気ですか。いいえ、元気ではありません」

 女のことが好きですか。

 女、という言い方ではなくて、まずは女性と言い直すべきです。

 男のことが好きですか。

 男、という言い方ではなくて、まずは男性と言い直すべきです。

 職業差別について、どう思いますか。

 いけないことですね。駄目です。

 職業差別が大好きなのですか。

 私の何の発言を聞いてそう思ったのですか。

 職業差別が嫌いですか。

 無能ほど頼る評価基準と言えます。

「学歴で判断して下さい」

「はい」

「学歴で判断してくれませんか」

「お願いをしなくても、社会は判断してくれると思いますよ」

「学歴って最高の評価基準ですよね」

「分かりやすいと思います」

「学歴じゃないと、人って判断できないですよね」

「一つの優秀な基準として機能することはあると思われます」

「学歴以外に人を理解することってできないですよね」

「できない、と思う方もいらっしゃいますね」

 学歴についてどう思いますか。

 一つの可能性であると考えます。

 簡単に言えば、宗教ですね。

「では、端的に言って、良いものですか、悪いものですか」

「端的に言う限り、人は現実を理解できなくなります」

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