8 案内屋
中に降りればもちろん咎められるが、上空を通過することまでは規制されない。もっとも正確には規制法があるし、取り締まりも行われている。ただし、それが厳格ではないのだ。だから商売も成立する。毎回毎回見て見ぬ振りをされることはないが、本当に目を盗めば客を送り込むこともできる。
もちろん問題は回収の方だ。ごく短時間で良い場合は着陸したまま待っている。一時間や二時間いたところで身体に害はない。少なくとも経験的には……。
困るのは最低でも一日くらい滞在したいという学者たちで、その場合には時間を決めて一旦領域外に立ち去ることにしている。戻ってきたときに約束の場所に客がいなかったことも、探したが見つからなかったことも経験済みだが、所詮非合法の商売だ。気にしていては精神が参る。だから金は必ず前金でいただく。
実際にいなくなった者たちの殆どは事後保護されているだろう。だからこちらの商売のことは筒抜けなわけだが、一斉手入れは、これまで数回しか受けていない。いずれも官憲様の空振りだ。小型飛行機や小型ヘリコプターを所有している航空会社の数は全国に少なくないが、隠し持つことも可能なのだ。別の商売の名の元に……。
だが同業他社は少ない。みな顔見知り。そうでなけりゃ喰っていけない。
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