シスコンな俺をとことんダメにしてくる甘々でブラコンな姉と、俺を好きな独占力マシマシな活発バレー部美少女幼馴染との板挟み・・・だった。

第一章 あなたの好きなモノ

暖かな木漏れ日の日々。

遥斗はるとはお姉ちゃんが好きなんだよねー?」


ゲームをいじっていた僕、浅井遥斗あざいはるとは、姉である浅井若菜あざいわかなに抱き寄せられた。


まだ幼い小学生の胸であったが、そこには確かに男の子にはない柔らかな感触があった。


「は、はあ?!・・・・はるちゃん?!嘘だよね?!違うよね?わたしだよね?」


完全に頭をホールドされた僕の顔は、今では姉の胸の中。その背後から、悲痛な声を上げる幼馴染の神崎水樹かんざきみずき


彼女はおもちゃをとられたかのように焦りだし、大慌てで僕の体を若菜わかなから引きはがそうとした。


若菜わかな!離して!」


「えー?でも遥斗はるとはここが良いって」


実際ここがいい。


どうあっても離れないとわかった水樹みずきは、ならば自分もと、背中から僕に抱きついた。


美少女にサンドウィッチ。あいだに挟まる僕。


遥斗はるとー。お姉ちゃんと一緒にいようね?」


「やだやだ。はるちゃん・・・や、やあ・・・」


当時の僕には下心というものが無くて、ただ純粋な好きがあっただけだった。


キスが最大の愛情表現であると疑わなかったお年頃。


今の僕からして見れば、あの時なんでもう少し楽しんでおかなかったんだろうなあ、と悔やむ毎日。


「お姉ちゃん、ゲームがやりにくい」


右腕にしがみつく姉に向かって言った。


「ダーメ。遥斗はるとはお姉ちゃんのだから。はい、あーん」


真夏の日差しが、ベランダから差し込んで、冷房の効いた室内を照らす。

ただでさえ、薄着なんだから、肌の密着面積がすごい。

姉は僕に向かって、すくったアイスを差し出してきた。


水樹みずき、離れて」


左腕にしがみつく水樹みずきに向かって言った。


「い、イヤァッ!はるちゃんはもうわたしのだから!ねえ捨てないよね?これからも一緒だよね?はるちゃんもわたしのこと好きだよね?」


僕の発言をどう受け取ったのか、幼稚園児にして独占力を発揮した水樹みずきは、がっちりと僕の左腕をホールドする。


それはまだ僕達が周りの目を気にせずに、ただ純粋にお互いを好きと言い合えた頃で、まさかこれが永遠ではなかったなんて、このときはつゆほども思っていなかった。


後悔は先に立たなくて、ある時期から、姉である若菜わかなは僕への甘やかしが収まって(けれど人がいなければいつも通りになる)、水樹みずきもなんだかよそよそしくなって(けれど人がいなければ問答無用で胸に飛び込んでくる)。


僕は周囲の会話から、なんとなく、今までが普通ではなかったんだと悟った。


寂しかった。悲しかった。変わってしまった。


けれどそれでもまだマシな方だったのだ。


秘密にすることが前提だったけど、それは十分に贅沢だったのだ。




僕と水樹みずきが中学三年生の頃。


——————————姉は部屋に引きこもった。


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