第3話 お見合い③
事前に火口ひぐちの人に連絡を取り次の仕事に同行者が増えたことを伝える。陰陽師の仕事は命がけだ。些細な事でも連絡をしておかないと何が命取りになるか分からないからだ。
すると火口の人は条件を出してきた。
「では彼を囮に使いましょう」
そんな案には賛成できない。しかし火口と水成の合同作戦とは言え上司はあちらなので私は拒否する事ができず了承した。
「私が一番に乗り出せば良い。」
そう決意した。
※
そうしてやってきた約束の日。人里離れた森の中にある大木。その周辺で私達は分散して隠れている。そこに事情を知らない彼がやって来る。やがて日が暮れてくると大木の邪念が具現化する。
大昔、この木は処刑場だったらしい。罪人たちはこの木につるされ飢え死にさせられていたと言う。殺されたものたちの念が長い間蓄積して邪念となってこの大木の周囲に漂っている。それは夜になると人に害する邪霊となっていた。
邪念は靄のような形となって彼に襲いかかる。
「水生中符・鉄砲水破!」
水鉄砲が靄を打ち払う。
しかし靄は形を変えさらに広がる。私一人では対処できない。そこへ炎が広がり靄を払い肥大化しないように抑えている。火口の援護だ。
それで自然と役割は決まった。火口が靄を外に出さないように結界をはり、私が靄を打ち払うと言うことだ。
「水生小符・水渦連砲」
小さな水鉄砲が複数放たれ閉じ込められた靄をさらに小さくしていく。
(このまま削って小さくなったところを一気に払う!)
そう思っていたところに靄が急に大きくなる。
(すさまじい邪気!ここまでは様子見だったと言う事!?)
その思考に一瞬隙が出来てしまった。そして死角から迫っていた靄に気付かなかった。靄に私は取り込まれる、その寸前のところで
「金生小符・鉄面角壁」
正方形の鉄で出来た小さな壁が靄の侵入を阻む。それで私は靄に気付くことができ距離を取る。
みると彼が私を援護していた。
「正面から大きいのが!」
彼の言葉で私は靄に集中する。
靄は肥大化してさきほどの数倍の大きさになっていた。急激な肥大化で火口の結界が間に合わない様子だ。
私は彼のもとに駆け寄り合流する。
「大技を使いたいので時間稼ぎをお願いします」
私は彼に援護を頼んだ。
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