第2話 お見合い②

五つの宗家の一つ鐘羽家の陰陽師として育った俺は幼い頃から陰陽師としての修行に励んでいた。学生時代は平均的な成績だったが、社会人になって仕事をし始めてからは挫折の連続だった。


 いざ実戦になると恐怖で足がすくみ守りばかりで攻撃に転じられないからだ。


 そうして三流陰陽師と言われるようになった。


 そんな俺には陰陽師としての仕事は来ることはなく、迷い猫探しや落し物を見つけるなど陰陽師なら誰でも出来る仕事を引き受けてきた。雑用係などとあだ名されても俺は陰陽師の仕事を続けてきた。自分への期待や未来への希望も無く気付けば37の歳になっていた。


 そんな俺に見合いの話がやってきた。相手は同じ宗家の水成家の娘で16歳の高校生とのこと。陰陽師の家系ではその才能が優先されることがあるため年の差の見合い婚はありえない話ではないが、俺自身にはそんな才能はない事は重々承知していたので何か裏があると考えていた。


 しかし宗家同士の見合い話のため無下に断る事はで気なのでとりあえず会ってみることになった。




 ※




 数日後なぜかお見合い相手の少女の仕事を手伝うことになった。彼女の父の話ではこの仕事で俺の力量を見極めるつもりだ。


 「気が重たいな」


 なぜ俺のもとに見合いの話しが来たのか。その理由は判明した。いわゆる奇妙な縁と言う奴だ。


 「期待に答えれそうに無いが、その時は仕方ないな」


 失望されることには慣れていた。だから余計な力を入れず肩を張らずに気楽に行くことにした。


 それは鐘羽家の養子として引き取られたときから続いている事だ。子どものいなかった両親は施設から俺を見つけ家に招いた。


 とは言っても跡継ぎを探しての養子ではない。両親は宗家としてあることを放棄していたからだ。俺を引き取ったのは子供のいない寂しさが一番の理由だと言っていた。それは半分本当だろうけど、別の理由がある気がした。けれどそれを指摘しても家族関係が壊れるだけで誰も幸せな気持ちにならないだろう、そう考え俺は両親の言葉を信じることにした。


 俺自身も陰陽師としての仕事に興味があったわけではないが、術は出来れば便利な事が多いので学ぶことにした。迷い猫の探索とか落し物を探したりと日常生活に役に立つ術が多いからだ。


 そんな理由で会得した術であるがゆえに他人の役に立つこともたまにあった。それから陰陽師の雑用のような仕事ばかりを引き受けてきた。


 一般にイメージする陰陽師の仕事は邪霊の退治や悪霊を払うことだ。また大きな災厄を予知するといったこともある。俺はそんな大きな仕事は出来ないし荷が重い。だから身の丈にあった仕事をしようと思った。そうして雑用をこなしつづけているとこんな年齢になっていまい、両親からの「早く孫の顔がみたいエール」が日に日に増していった。


 「けれどお見合いまでさせられるとは思わなかったな」


 そう言う期待も裏切ってしまうかもしれないが、ひとまず考えるより行動する事にした。


 「そろそろ約束の時間かな」


 手伝いの仕事とは水成と火口の合同ので行う仕事だ。ある大木にとり憑いた邪霊を払うというものだ。宗家が合同で行うのは大きな仕事である証だ。そんな仕事に立ち会うことすらなかった俺は少し緊張していた。


 (まあ俺が払うわけじゃないから邪魔にならないようにしないとな)


 そう思っていると、約束の時間が過ぎていることに気付く。


 そしてもう一つ気づく事があった。 


 大木から禍々しい気配が伝わってくる。


 「これは危険だ」


 俺は直感した。このままここにいると危険だ、と。案の定、禍々しい気配は強くなり黒い気体状の靄が発生する。


 靄は俺に向かって迫ってきた。

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