逃げた初恋の人

 私は大変なミスをおかしていた。

例の電話番号のメモを家に置き去りにしていたのだ。


 先生に駅の公衆電話で連絡した。

先生はこう答えた。

「親から電話があった。今の電話も、ユキからの親からかと思って、気が気じゃない。どうにかなりそうだ」

 もう、ダメだ。取り戻せない。

泣いた。理由はわからない。

なんとなく覚えているのは、先生と会えなくなることより、

母の気持ちと、友達に嘘をつかせて泣かせてしまったことの痛みだった気がする。

 テレホンカードはもう切れる。

千円出して、新しいカードを、買って話す気力はなかった。


 三十年前の私の初恋は、強制終了した。

当たり前だ。

今となれば、なんとゆう時代だったのだ。

少女だから、大胆不敵。

    

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