公衆電話

 受験に向け、進級し、3年になった。


3月で、彼は講師を辞めることになった。

就職活動である。

 

 その時、別れが寂しいとか思ったかは思い出せない。

 最後の授業で、

「わからないことがあったら、電話して」と、生徒四人に向けて、白板の端に電話番号を書いた。

すかさずメモを取る。

 ご当地キャラのような犬のメモにはっきりと書き、お財布に大事にしまった。


 5月になり、塾友達のユリコが、先生に電話してみない?と言うので、駅の公衆電話から彼女は躊躇なく彼に電話をした。

 私はその時、そんなバカなことしても、相手になんかしてくれないよ。と、すでに冷めていた。恐らく、受験勉強が本格化し、彼のことは忘れていたんだろう。

 バカな計画だけど、やってみたら?と促した。

 彼女がかけると、電話に彼が出た様子だった。彼女は中学生らしいテンションで、あそぼーよー、なんか言っていた。

 電話変わる?と彼女に言われ、ちょっと緊張して変わった。


「もしもし?先生?」


 しかし、彼の反応が以外だった。


「電話、待ってた」

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