『サイコー新聞部』シリーズ

今田葵

Ⅰ. 透明少女

第1話 遺書

島崎しまさき 向葵ひまり殿


前略

 私はいま天国にいます。

 びっくりしたわ。まさか天国にポストがあるなんて。それにヒマリ、天国のポストは何色だと思う? 日本は赤で、アメリカは青、フランスは黄、中国は緑ときたら、天国のポストは白かしら? なんて想像していたら、まさか透明なんだから驚きよ。透明ということは中が丸見え……と思いきや、むしろ逆。中が全く見えない。ポストの輪郭はしっかり見えるんだけど、それ以外のところは完全に景色と同化しちゃってるの。透明ってオープンってイメージだったけど、実はシークレットの方が合ってるのかもね。

 

 ……ごめんなさい、ふざけちゃって。でも、遺書って何書けばいいか分からなくて。なんで本屋に遺書の書き方マニュアルって売ってないのよ。売ったら絶対もうかると思うのに。まあでも、遺書って多分自殺した原因なんかを書くのよね。私が自殺した原因、それはね……


 


 ちょっとヒマリ、遺書破かないで。よく知らないけど、遺書破くとナントカ法で逮捕されちゃうから。お願いだから最後まで読んで。


 まあ、その、ここで長々と自殺の原因を書いてもいいんだけどさ。天国で暇しているはずの私としては、姉の自殺の原因を知るために奔走ほんそうする健気けなげな妹の姿を、野球観戦の如く見ていたいわけよ。だって天国って何もないでしょ、きっと。

 それに、手紙一枚で伝わる思いよりも、100日、1000日、10000日たった後で、やっと伝わる想いのほうが、きっと素敵だと思わない? 伝わらない想いが長い年月をかけて誰かのもとに届く。まさに革命ね。


 もちろんタダでとは言わないわ。ヒマリが10歳のときサンタさんに頼んでたアレをあげるわ。あの時はその……そう、在庫切れでサンタさんが渡せなかったんだけど、今回はちゃんと貰えるから安心して。しかも今回は奮発ふんぱつして2つプレゼントするわ。なかなかいい話だと思わない?

 

 でも、ヒントなしはちょっと可哀想よね。だから特別出血大サービス。アドバイスを一つあげるわ。ヒマリ、サイコー新聞部に入りなさい。私もそこに入ってたの。ほとんど幽霊部員だったけどね。そこに行けば、手がかりが得られるはずだわ。それとプレゼントもね。たしか、貴女あなたは生徒会に入ってたはずだけど、うちの高校は兼部が出来るはずだし、大丈夫よね? それに生徒会ってどうせ暇でしょ? よく知らないけど。


 それと、最後に一つだけ。貴女あなたの名前、実は私が考えたのよ。向葵ひまり向日葵ひまわりみたいに太陽いっぱい浴びて元気に育ってほしいと思ってね。引っ込み思案の貴女あなただけど、思い切って光の方へ進んでみるのも悪くないと思うわ。


 何かあったら、いつでも私のお墓にいらっしゃい。それじゃあ、元気でね。


                    かしこ

                  島﨑しまさき 真白ましろ




 

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