第20話 ウルフダンジョン②

 早速卵にエメラルドのかけらを投入していく。

 すると卵にこんな表示が出た。


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 アイテム/謎の卵

 ジョブ:テイマーにのみ孵化させることが可能

 孵化させる場所によって能力値が変わる

 孵化させるまでの行いで見た目と性格が変化

 孵化させた存在は帰属アイテム扱いとなる

 成長:1/30

 孵化:0/4

 名称:ーー

 種族:??

 属性:??

 個性:??

 能力:??

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


 一個目による投入に変化なし。

 属性の変化は五個目にてようやくついた。

 それ以外の項目に変化は見られず。


 十個目になると、個性がついてくる。

 エメラルドが多いと穏和。ルビーが多いと勇敢、などだ。

 ここら辺をメモにまとめて書き留めておく。


 十五個目付近で種族に変化が生まれる。

 ウルフダンジョンに居るからか、ウルフの系統なのだろう。

 ベビーウルフが候補に上がった。


 能力の方は生まれてから着くのか、今のところ変化は見られずに居る。



┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 アイテム/謎の卵

 ジョブ:テイマーにのみ孵化させることが可能

 孵化させる場所によって能力値が変わる

 孵化させるまでの行いで見た目と性格が変化

 孵化させた存在は帰属アイテム扱いとなる

┣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー┫

 成長:18/30

 孵化:0/4

 名称:ーー

 種族:ベビーウルフ

 属性:火

 個性:勇敢

 能力:??

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 と、その前に名前を決めてあげたほうがよさそうだ。

 オスかメスか、性別がない状態だから決めかねるが、これから一緒に冒険する仲間だもんね。

 私の武器はパターなので、そこに紐づけて考えてみる。

 ボール、だとあまりにも安直か。


 そもそも私はAWOの時も安直なネーミングで頭を悩ませたものだ。

 ほぼネーミングらしいネーミングをつけてあげられなかったからね。

 娘たちの名前は妻が考えてくれた。私に任せると花子とかそういうのになるから可哀想と。その直感は当たっていたよね。


 いっそ安直にゴルフボールでもいいんじゃないかとすら思うが、この子がその名前を聞いたら嫌がる可能性も考えて少し捻ってみる。


 ホールインワン、コンドル、アルバトロス、イーグル、バーディ、パー、ボギー、ダブルボギー、トリプルボギー。

 順にコースを回る際にどれだけ少なく叩いてカップに沈めるかの用語だが、叩く前提なのは少し気がひけるな。

 では共に歩くものとして、キャディ? カート?

 カートはただの乗り物だし、乗るのは違う。

 乗れるかもわからないしね。ならキャディだろう。

 使うクラブは一本なので選んでもらうまでもないけど。

 そこら辺かな。欽治さんには指をさして笑われそうだが、今後相棒としてやっていくならキャディで結構。

 名前はキャディとした。

 


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 アイテム/謎の卵

 ジョブ:テイマーにのみ孵化させることが可能

 孵化させる場所によって能力値が変わる

 孵化させるまでの行いで見た目と性格が変化

 孵化させた存在は帰属アイテム扱いとなる

┣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー┫

 成長:18/30

 孵化:0/4

 名称:キャディ

 種族:ベビーウルフ

 属性:火

 個性:勇敢

 能力:??

 <概要:ありがとうございます、嬉しいです>

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 なんか出た。これってどこ情報?

 餌のルビーを余計にふたつ投入して成長を20にしてみると。


 <概要:次はお肉が食べたいです、お父さん>


 あ、これ。この卵が欲してる内容だ! と即座に察知する。

 成長20〜個性によって要望を出してくる。個性づけ位が重要課題、とメモを走らせる。存外、面倒だなテイマー。

 しかし一人で探索をしてるのもあり、相槌を打つ相手が出来たと思えばやりやすい。個性が勇敢なのもあって、ハキハキ喋るから対応しやすいしね。

 問題があるとすれば、お肉のようなアイテムが入手できない点か。


 とそんな雑念を振り撒きながら歩いてると早速ウルフが登場。

 群れで現れると聞いていたが、三匹。

 目は真っ赤に血走っており、瞳は爛々と光ってこちらを捉えている。


 キャディ君が震えて教えてくれる。

 まだしっかり同胞という意識がないのか、なにが相手も怖いようだ。

 思えばロウガ君やくま君との対面でも小刻みに震えていたっけ。


「さぁて、どう迎え打つかな」


 言ってる側からウルフが襲ってきた。

 一匹が飛びかかり、二匹が左右に分かれてサポートに回る。

 敵ながらあっぱれだね。しかし、


「私にとっては恰好のカモだよ、ウルフ君!」


 チェインクリティカル発動!

 事前に仕込んでいた壁材で作ったボールをしょっとして顎下を狙う。

 真下から突き上げられた衝撃によって前方から襲ってきたウルフは撃退。


「更に、ここからが真骨頂!」


 手元に帰ってきたボールを明後日の方向へ打ち込むことで狭い通路でボールが跳ね返った。私のチェインクリティカルは壁に当たっても床に当たってもヒット数を伸ばしていく。まさに一人でチェインを体現していく違法行為!

 ……AWOでは一人チェインは成立しないから得意に強いと痛感するよ。


 まだスキルレベルがⅠと低いが、それでも10ヒット目、15ヒット目には通常攻撃の1.5倍くらいのダメージが出ることを前回の始まりにダンジョンで体験済みだ!


 偶然当たった流れ弾がウルフの背中に直撃した。

 流れ弾に当たった側面担当ウルフはその場で塞ぎ込んで立ち上がれずにいる。

 はい、コアショットⅢ。

 

「可哀想だけど私には帰る家があるからね。命を差し出すつもりはないんだ」


 弱肉強食は世の常とまではいかないが、私の卵が肉をご所望だ。

 君たちの尊い犠牲を忘れないよ。

 ウルフの属性は木だったのか、火属性の攻撃はよく効いた。

 別にボールを当てなくたって、地面を擦って、振りかぶった先に対象が居ても2ヒットができるずるい攻撃。

 これがチェインクリティカルの恐ろしいところである。

 動きの鈍ったウルフを一匹づつ仕留めて戦闘終了だ。

 スライムに比べて動きは速いが、殴っても効果がないスライムより耐久面が脆いのが勝敗を決める分かれ道となったよね。


「さぁてドロップ品は?」


┏━━━━━━━━━━━━━━┓

 アイテム/ウルフの牙

 アイテムの合成素材【錬金術師】

 武器・防具の合成素材【鍛治師】

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┏━━━━━━━━━━━━━━━┓

 アイテム/ウルフの肉

 調理の素材【調理師】

 テイムモンスターの餌【テイマー】

┗━━━━━━━━━━━━━━━┛


 早速新しいジョブ候補が出てきたぞ?

 鍛治師に調理師か。ドロップ品であれこれしたら生える職業なのは確定。

 そこら辺は錬金術師と同様だな。

 料理の方は欽治さんの奥様に頼めば生えるだろうね。

 本人が引き受けてくれるかは未知数だけど。

 あの人もなんだかんだ忙しい人だから。

 時間加速が可能なVR以外でその手腕を振るう機会は多分ないよなぁ、なんて無責任なことを考えていた。


 鍛治と言えば適任者が一人いるけど、あの人も長井君同様ゲームに忙しい人だからね。一応誘っておいてダメならダメで諦めようかな。


 私の妻も料理はできるけど、狼の肉なんて調理したことないし特に食べるのに困ってないから誘うのは無理そうだ。


<概要:美味しいです、お父さん>


 ちなみに欲している餌を与えると成長の伸びが良い。

 ルビーやエメラルドのかけらは+1だったのに、肉は+3。

 後になってこれは共食いじゃないか? と気づいたが、海の生物だって共食いしてるしヘーキヘーキ。

 気を取り直して奥に進むことにした。

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