(三)-3

「もう一度聞くけど、覚悟はできているわね」

 病院に入ったときから嫌な予感はしていた。

 しかし、病室のネームプレートのところには「久宝ミカ」ではなく「春田ミサト」とある。どこかで見た名前だが、すぐにはわからなかった。

「本当にここなんですか」

「そうよ」

 サナさんはそう言って振り返り、俺を見た。俺の目をジッと見つめてきた。大会などで競技に出場する直前の選手の目と同じだった。冗談でもウソでもない、キツい、本気の視線だった。

「わかりました」

 そう言って俺は頷いてみせた。

 それを見ると、サナさんはドアの方に向き直り、病室のドアを開けた。


(続く)

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