第37話

 タマ無双。

 ありとあらゆる魔物をタマの柔らかい腕が斬り裂き、血祭りへと上げる。


「おっ。スキル獲得」

 

 そして、8階層を何事もなく通過し、9階層へとやってきた僕たち。

 9階層は僕が降り立つ最高階層。

 当然新しいスキルも獲得することが出来た。


「おーん。結構良きかな?」

 

 スキルの効果を脳内で回し、どう活用できるかを考える僕は独り言をつぶやいて頷く。


「ニャー?」


「ん?……新しいスキルは『加速』。色々なものに加速度を与えられるみたい。熱運動とかに使えるかも?」


「ニャー」


「そうだよね。結構便利だと思う」

 

 僕はなんとなくでタマと会話しながらダンジョンの中を歩く。


「ほい」

 

 そして、ダンジョンの曲がり角にいた魔物の周囲の熱運動……分子へと加速度を与えることで分子同士のぶつかりを加速、信じられない速度で熱運動をおこし、そのまま魔物をドロッと溶かす。

 

 加速され、信じられないような熱も僕のスキル『太陰眼』の数ある異能の一つを使えば簡単に冷ますことが出来る。

 分子の一つ一つを石化してしまえば良いのだ。


 温度を絶対零度まで下げても案外耐える魔物は多いんだけど、やっぱり信じられない温度まで上がる熱を耐えられる魔物は絶対零度の時よりも少ないようだ。


「ニャ!?」

 

 自分よりも先に僕が魔物を倒したのを見たタマが大きな声を上げて驚愕し、その体を硬直させる。

 ……その驚きが悪かったのだろうか?


「ちょっ!?タマ!?」

 

 タマのスキルで浮かしていたカメラ並びにスマホが地面へと落下。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああッ!?カメラがぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!?というかスマホぉ!?バックアップとか取ってないんですけどぉ!?こういうのってSIMカード?ってので行けるの!?」


 それらの機械は甲高い音を上げて地面を転がり、その機械としての寿命をあっさり終えてしまったのだった。


「にゃーん」

 

 僕が悲痛な号哭を上げている横でタマは呑気な鳴き声を一つ、上げるのであった。

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