第34話

 人間へと殺意を持ち、所かまわず突っ込んでくる魔物がうじゃうじゃ湧いているダンジョン。


「桜、そっち行っているよ」


「了解……ッ!」

 

 そこを桜と共に潜っている僕は後ろから桜へと声を張り上げる。

 僕の仕事は一生懸命ダンジョンに潜っている桜へと声をかけることだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……多いッ!」

 

 ゴブリンに囲まれ、棍棒を振るう桜は一生懸命戦っている。

 ……ちょっと数が多いかな?初心者が相手にするにはちょっときつい数が集まっちゃったかも。

 

「ほい」

 

 僕は桜がヤバいなってタイミングで腕を振るう。

 魔力放射のスキルが発動し、僕の魔力がレーザーとなって放出され、ゴブリンの眉間を打ち抜いてサクッと殺す。


「おぉ……」

 

 一瞬にして自分の背後にいたゴブリンを殺した僕の腕に桜が感嘆の声を上げる。


「……やっぱり翔琉って強いんだね」


「当然。今更ゴブリン如きに負けたりはしないよ……それで?もうそこそこ魔物を倒したと思うけど、自分の身体能力的には今どんな感じ?最初のうちはこれだけでも違いが実感出来ると思うんだけど」


「……おぉ!確かに結構違うかも!体が軽い!」


「それが魔物を倒すことで得られる身体能力の上昇だよ」


「これが……ッ!」


「これで桜も常人を超えた力を手にし、やろうと思えば一般人を簡単に殺せる力を手にしたってことだからね……自分の手にある力の重さを実感してね」


 結構真面目なトーンで僕は桜に告げる。

 冒険者の中には身体能力の向上を受け、全能感に酔いしれてしまい、犯罪行為を起こしてしまう人たちがいる。

 自分の幼馴染である桜がそうなったら割と悲しい。


「……うん。わかっている、つもり。力を持つことの意味の重大さは」

 

 僕の言葉に対して桜も真面目な表情で力強く頷く。


「その言葉を言ってくれるだけで合格点だよ……それじゃあ、先に進んでいこうか」


「うん!」

 

 桜が僕の言葉に力強く頷く。

 僕たちはダンジョン探索を続け、魔物を倒しながら先へ先へと進んでいった。

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