第32話

 桜から一緒にダンジョンに来てと頼まれた僕はそのお願いを快く引き受け、桜と共にダンジョンの方へとやってきていた。


「……翔琉、そんな装備で大丈夫なの?」


「大丈夫だ。問題ない」

 

 心配そうに声を上げる桜に対して僕は力強い頷きで返す。

 今の僕の装備は腰に下げている剣が一つだけ。

 ちゃんと初心者おすすめの装備で全身をがちがちに硬め、武器もとりあえず初心者が最初に使う武器としておすすめされている棍棒をもって準備万端の桜と比べると準備量の差が露骨に確認できる。

 

 いや、でも僕の剣はちゃんと良い奴だから装備の価値的には僕の圧倒的勝利だな。うん。

 装備は見た目じゃないよ。

 一番大事なのはその質だからね。

 

「本当に……?」

 

「大丈夫だよ。どうせ今日は桜もいるから一階層にしかいかないからね。一階層程度であればこの装備で十分だよ」


「そんな油断が命を奪うってネットには書いてあったけど……」


「僕は一階層じゃ油断しても命を奪われないほどに強いのだよ」

 

 自分の身体能力だと、一階層の魔物の攻撃を一切の防御なしですべてぶつけられたとしても傷一つ負わないだろう。

 僕はそれくらいには強い。


「翔琉がそういうなら信じるよ……それに本当に大変なことになったら私も頑張るし!」

 

 桜は両手で握りこぶしを作りながら元気よくそう話す。


「あぁ……うん。そうだね。今日は桜のダンジョン探索だからね。僕はあくまでサポートだから桜に頑張ってもらうよ」


「うん!わざわざありがとね!」

 

 僕の言葉を聞いた桜が笑顔を浮かべながら感謝の言葉を口にする。


「ううん。全然大丈夫だよ。幼馴染のこれくらいの頼みくらい聞くよ。それじゃあ、行こうか。心の準備は大丈夫?」


「うん……大丈夫。心の準備ならここに来る前に整えてきたから」

 

 僕の疑問に対して桜は力強く頷いて見せる。

 その姿からはちゃんと明確な覚悟を感じ取ることが出来る。


「それなら良かったよ。それじゃあ行こうか」


「うん」

 

 僕は桜と共にダンジョンの入り口へと入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る