第30話

「あっはっはっはっはっはっは!笑いが止まらない!!!」

 

 僕のスキル『煉獄救済』。

 死者を一人まで蘇らせるという驚愕なスキルの内容ゆえに世界中で大きな話題となって世界中の報道機関で僕のことが取り立たされ、一躍時の人となって自分のチャンネル登録者数も世界一位となった僕は高笑いを浮かべる。


『……笑っている場合じゃないのわかっている?』

 

 そんな僕を見てビデオ通話を繋げている美咲さんが呆れながら口を開く。


『あなたのスキルを羨み、狙おうとする人の数がどれだけいることか……』


「自分に勝てる人がどれだけいると思いますか?」

 

 真面目な表情で僕に問い詰めてくる美咲さんに対して僕はそんな言葉を返す。


「……まさか、美咲さんたちが僕を捕えようとしますか?」


『しないわよ。そんなことしたら心美にぶち切れられるもの……確かにあたなは強い。でも不意打ちなんてされたら……』


「本気でそう思っています?僕が不味いって」


『……少し、危機感を持って欲しいじゃない』

 

 僕の言葉を受け、美咲さんはほんのわずかな沈黙ののちに視線を逸らしながら口を開く。


「日本政府は一応将来有望な冒険者である僕と敵対するような愚行を犯さないでしょうし、日本とこと構えられる国はいないと思いますよ?」


『そうね。私たちとも懇意にしているあなたと敵対するような愚を犯すほど彼らは腐りきっていないし……日本と敵対出来るような国もいないわね』

 

 僕の言葉に美咲さんは頷く。


『それでもあなたを心配する私の気持ちもわかって欲しいの……今はそうかもしれないけど将来はわからないわ』


「自分的には女の子にモテる可能性がわずかにありそうな若い時さえなんとかなれば後はなんでもいいんですけどね……」


『……翔琉くん』


 僕の言葉に対して美咲さんがただ一言自分の名前を呼ぶ。


『刹那主義的な生き方も良いけど……貴方のことを心配している人もいるってことを忘れないで』


「わかっていますよ……わざわざ心配してくださりありがとうございます」

 

 僕は美咲さんの言葉に素直に頷き、心の底からの謝礼の言葉を口にした。

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