第1話

 日本人離れした腰まで伸びる美しい白銀の髪にまるで宝石のように輝く蒼色の瞳を持った抜群のスタイルを持つ少女。

 制服をバッチリと着こなし、人懐っこい笑みを浮かべて自分の周りにいる友達と仲睦まじく話している少女の名前は天鳳桜。

 僕の幼馴染である。


「いやぁ、あんな美少女と幼馴染とかお前もうらやましいよなぁ……美少女の幼馴染を持つ陰キャ。お前ってばラノベの主人公に相応しいと思わないか?」

 

 共に桜のことを眺めている僕の友人である男……特に身体特徴を上げる必要性もないような陰キャ仲間、本庄玲央が口を開く。


「それ、ギリギリ暴言だと思うんだけど」

 

 僕は玲央の言葉に眉を顰めて口を開く。


「今の僕と桜とじゃ信じられないほどの差があるからね。別に特別感はないよ……ふっ。劣等感ならあるけどね」


 一体どこで差がついたのだろうか?

 小学生くらいまでは仲の良かった僕と桜の間にはいつの間にか果てしない格差が出来上がっていた。

 クラスの中心メンバーである陽キャの桜。

 クラスの端にいるようなクソ陰キャの僕。

 その差は歴然だ。


「……なんかすまんな」

 

「ふっ。別に構わないさ……僕は冒険者になってモテるようになるんだからなぁ!」


「……冒険者、ねぇ」

 

 僕の言葉を聞いた玲央が何とも言えない表情を浮かべる。


「あれは本当に大丈夫なのか?」


「詳しいことなんて僕は知らないよ?」

 

 冒険者。

 様々なことに使える資源が大量に産出させる代わりに人間を襲う魔物が闊歩している物理法則を無視して下へ下へと階層を伸ばしてダンジョン。

 一年くらい前に世界中で起きた大地震の結果、誕生したファンタジーな場所だ。

 冒険者とはそんなダンジョンに潜り、魔物を殺し、資源を回収するのを仕事としている人たちのことを指す。

 

 どういう原理かは知らないけど魔物を殺せば殺すほど人間の基礎的な身体能力が向上し、ダンジョンの階層を一つ跨ぐと共にスキルと呼ばれる特殊な力を手にすることになる。

 そのため、探索者はどいつもこいつも人外である。

 

 僕が知っているのはこれだけ。

 ダンジョンを進み、魔物を倒し、強くなって実に金になる資源を採取してがっぽり稼ぐってことだけ!

 金があって強い!つまりモテる!

 僕の時代来るって寸法よ!


「おい。それでいいのか?魔物は人も殺すんだぞ?」


「そんなの当たり前でしょ。こっちだって魔物を殺しているんだから」


「えぇ……覚悟がんぎまりじゃん……こわぁ」


「おい」

 

 少しばかり引いた様子を見せる玲央に対して僕はジト目を向けた。

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