ダンジョン配信猫ちゃん無双の億万長者~モテたくてダンジョン配信を始めた陰キャ高校生たる僕の飼っているペットの猫が強すぎて自分のかっこいいところを見せられない!~

リヒト

プロローグ

 吾輩は猫である。名前はまだない。

 どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめしたところでニャーニャー泣き、地球ではないダイソン球を完成させた超高度文明を持つ惑星で天才科学者として活躍していたことだけは記憶している。

 吾輩はここで魔物というものをこの地球という星で始めて見た。

 しかもそれは吾輩の研究仲間が最高傑作として量産させていたスライムという種族であった。


「産めよ、増えよ、地に満ちて土地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ」

 

 壊れ行く我らが母星より脱出し、地球へと逃げ延びた過程で力を失い、脆弱な獣でしかなくなった吾輩たちの飼い主として進化させていった人間たちに与えた最初の指令。

 それに対して疑問に抱くだけの知性へとうっかり進化させてしまったがあまり衰退へと進んでいく人類の現状を打破するため。

 更なる進化を生み出すための闘争と本能を高め、吾輩たちの指令を強く感じさせるための死の恐怖を身近へと


「突如として世界に広がったダンジョン。ダンジョンには映像にあるスライムのようにダーウィンの進化論では説明不可能な生命が多く生息しています」

 

 人間たちがようやく芽吹かせた小さな文明の技術力によって作られたテレビに映されているスライムの映像を眺めながら吾輩は泣き声をあげる。

 吾輩は蚊帳の外であろうか?

 研究内容がダンジョンに関係ないものであるとは言え、こんな大規模のことをやっていたのであれば吾輩も呼んでくれれば良いのではないか。

 吾輩のところにはダンジョンを作り出すことにしたよ!という一報しか来ていない。

 ここまで進んでいるとは思ってもみなかった。


「にゃーん」

 

 それにしてもこのダンジョン政策はカンブリア爆発のように上手く行くのだろうか?

 生命の息吹も感じられなかった生命に息吹を吹きかけるのと、既に文明の小さな芽を萌芽させた人類に更なる進化を促すのとでは難易度が違う。

 ここが人類の限界なのではないか。

 中途半端な知性しか獲得出来なかった人類の限界に吾輩たちはぶち当たっただけなのではないか。

 ダンジョン政策に対して一抹の不安を抱く吾輩の耳に扉の開く音が聞こえてくる。


「にゃ?」


「ただいまー。タマー良い子にしていた?」


 吾輩しかいなかった部屋に童顔の一人の少年が入ってくる……吾輩の飼い主だ。

 飼い主、遠坂翔琉の帰還である。

 吾輩は立ち上がり、部屋の床を駆け抜ける。

 

「ニャー!ニャー!ニャーッ!」


 吾輩は愛しの飼い主に飼われるタマであるッ!!!

 ごしゅじんたまぁー!!!

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