V成る彼女は尊いをKしたい!

アルファディル

Precious story No.1

Precious story No.1

 

「はぁー、やっちゃったぁ!?」

 

こんにちわ、最近勤めていた黒い会社を辞めて現在無職な社会人(笑)のーーーです

 

なんで初手ため息をついているのかと言うと…今日面接で盛大にやらかしたからです

 

その会社では【Vニーズ三期生募集!】というVtuberの魂を募集していて私はそこに応募して、運良く面接まで漕ぎ着けました

 

【Vニーズ】は今現在Vtuber業界のトップクラスにいるグループでそこに行くことが出来れば私の野望も叶うんじゃないかと思ったのです。元々の憧れもありますが

 

Vtuberがわからない人のために説明するとVtuberはイラストレーターさんやモデリングさん、その他大勢の人が作り上げた二次元のキャラクターに魂を吹き込んで動かして動画を作ってる人達の事です(これ説明しきれてる?)

 

そこへ私は自分の野望を叶えるために黒会社からてんしょ…転生しようとしたんですけど…面接で面接官の人達がたっぷり10秒位沈黙しちゃうくらいおかしな事を言ってしまいました

 

自分としてはそんなおかしな事を言ったつもりはないと思うんですけど、よくよく考えたらそう言う思いでその世界に飛び込む人っているのかなと考えると…少なくても私が見てきた中ではいなかったし、あれ、これやらかした!?と言う気持ちでいっぱいになりまして…

 

あぁもういいや!凹んでてもしょうがない!私の抱く野望は野望として事実なんだから撤回なんかしない!!もうどうとでもなれ!

 

と思いつつバイトを探すためにタウンワー●と次の就職先を探してその片手間に(と言いつつこっちに8割意識が向いてますが)動画サイトを開き、まだ見ぬ●●を探してVtuberの切り抜きや配信を見る私でした

 

 

 

 

 

会社サイド

 

「ーーーそれで最後は…ふっこの子か、いやぁこの子すごっかったねぇ。今思い出しても面白いよ」

 

「社長、笑い過ぎです失礼ですよ?」

 

「ごめんごめん、でもさ今まで面接結構やってきたつもりだけどあそこまで堂々と自分の志望理由?いや本人曰く野望かな?を言い切った人いなかったからさ」

 

とあるビルのオフィス、そこでは募集していた【Vニーズ三期生】の面接が終わり誰を採用するかの話し合いをしていた

 

一人また一人と進む中、最後の一人となりその人物についての話し合いが行われていた

 

「ですよね〜、一瞬冗談言ってるのかなと思ったんすけど…目を見たら違うなと思ったっすよ」  

 

「だよねだよね!ほらぁ翔くんもこう言ってるし!なら俺がこう言うのも仕方ないよね!」

 

「いや社長!自分を巻き込まないで欲しいんすけど!?あ、明美さん俺は無実っすからね!?」

 

「社長を盾にするとは翔くんひど「社長?」ん、んー!さてじゃあこの子の話に戻ろうか!」

 

秘書である明美から鋭い視線を感じ何かを察した社長は咳払いをすると話の軌道修正を行った

 

おおよそ会議とは思えない雰囲気だが此処ではこれが当たり前となっている

 

「にしても面接の最初は緊張しているのが見て分かるくらいだったのに志望理由聞いたら人が変わったように熱弁してたよね〜」

 

そこで彼等は面接での出来事を思い出す

 

 

 

 

「ーーーそれでは次の質問です、貴方がこの募集に応募した理由をお聞かせください」

 

「(ど、どうしようここまで緊張してて何を答えていたか分からない!?変な事は言ってないはずだけど…えぇいどうとでもなれ!)はい、尊いを補給、供給、共有したいからです!」

 

「………はい?」

 

「(10秒くらい場が凍った気がするけど気にしたら負け!)私は以前別の会社に勤めていた際、疲れた時、凹んだ時、気持ちが沈んだ時に御社のVtuber同士の絡みや仲がいいからこそ出来る口喧嘩、てぇてぇ等、それら【尊い】を見て聞いて勤務への活力としていました!そして御社の募集を見てそれを生で補給し、視聴者の皆様に供給、どう思い感じたかを共有したいと言う野望の元御社を志望しました!!」  

 

「は、はぁ、具体的にはどのように?」

 

先程までとは打って変わり水を得た魚のように話し始める彼女に戸惑いながらも続きを促す面接官

 

「(ん?一人下を向いてる?なんでだろ)はい!御社でデビューした際はすぐにコラボというのは難しいと思うので、ゲーム実況や歌配信をしながら、他の先輩方のコラボを見てくれてる方々と同時視聴等をしながら「ここが尊い」などを補給、共有していって同期とも積極的に絡んでいき、私自身も尊いを供給できれるようにしたいと考えてます!」

 

面接官はその職種上、様々な人を見る。その中で相手が嘘をついているかがある程度わかる、そこで彼女だが

 

「(これ、一切嘘ついてないっすよね?少なくてもあの目からは嘘だと思えない程の本気が見える、てかさっき野望って言ったっすね?あ、社長笑ってるし)そうですか、因みにですが何故そこでVtuberなのでしょうか?(Vtuberに対する思いは聞けたっすけど、何故そこでなりたいと思ったかの理由にしては何か違う気がするっす)」

 

数秒沈黙した後に彼女は語り出す

 

「…はい、私はVの世界そのものに夢を抱いています。勿論Vの中の人には苦労や苦悩をしている人もいると思います、そんな中配信や動画ではその姿を見せる事はせずリスナーに喜怒哀楽やそれ以外の言葉には表せない感情、其れ等【尊い】を、得るだけでなく私自身がそうだったように、自分を見て【尊い】と感じて仕事や勉強の活力にして欲しいと考えたからです」

 

そう言い切った彼女の目にはやはり嘘は感じられなかった

 

その後も面接は続いていき最後に面接した人全員に聞いている質問を彼女にもした

 

「貴方にとってVtuberとはなんですか?」

 

「私にとってVtuberは夢です。悲しい事、苦しい事、疲れた事があっても画面の中で常に【尊い】をひと時の夢のように魅せてくれる存在、それがVtuberだと思っています」

 

そう言い切った彼女、こうして面接が終わり出て行った部屋からは大きな笑い声が響いたという

 

 

 

 

「いやぁあの時はほんと、面白すぎて笑い堪えるの大変だったよ。「社長?」…いやいやいや!違うよ?彼女を嗤ったわけじゃなくて、純粋にそんな想いを抱いてここ来た子始めてだったからさ」

 

「社長の意見には同意っすね〜今までに見た事ない野望を抱いてきた彼女がVtuberになったらどうなるか、自分は結構興味あるっす」

 

「はいはい社長も翔くんも私情はこのくらいにして話し合いを進めましょう」

 

「は〜い」

 

 

 

 

 

ーーーサイド

 

面接が終わってから二ヶ月、私は結果を待ちつつもコンビニでバイトをしていました。いやぁにしても今日来店してきた親子連れのお客さん!!凄い仲が良くて尊かったなぁ!

 

何よりお子さんのお菓子をおねだりするときの上目遣い!レジ近くでやってたから見れたけどあれはもう萌えですね萌え!尊い!

 

え?尊いはVtuberだけじゃないのかって?確かに主に補給しているのはVtuberの皆々様ですが、決して尊いはVtuberだけにあるわけじゃありません!あぁ言う仲のいい親子だからこそ出来る会話、付き合いたてのカップルの近くて遠いような甘酸っぱい空間、部活帰りの高校生達のちょっとした(お店に迷惑がかからない程度の)悪ふざけなどなど、日常生活でも見渡せば尊いは転がっているのです!

 

ま、まぁ私は黒会社に勤めていてそこに目を向ける余裕なんて皆無だったんですが………あれ?そう考えるとコンビニって私の天職?

 

アルバイトが天職ってどうなんだろ?でも事実色々なお客さんに出会えて、勿論いいお客さんばかりではありませんが…それも含めて生きてるって感じがして尊いです!

 

「ん?これって…」

 

マンションについた私はポストに封筒が入っているのに気がついた、これVニーズから?

 

も、もしかして!

 

期待と不安、その両方がごちゃ混ぜになったような感情を抱きながら私は恐る恐るその封筒を開きました

 

「………や」

 

「やったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

封筒の中に入っていた紙の内容を見た私は嬉しさが限界突破して思わず大声で叫んでしまいました

 

私の野望へ向けて一歩前進!!

 

私の叫び声に何かあったのかと心配して出てきてくれた住人の方々の誤解を解くのに30分くらいかかったのは蛇足です!

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