第6話 デジャヴ
病院に着いたレオは受付でクリスについて聞いてみた。どうやら面会は無理のようだ。専用の部屋で治療を受けていることを教えられ、その部屋まで案内してもらうことに。
彼は案内してくれるスタッフのあとをついて歩いていると、ある部屋の前を通りかかったところでデジャヴを感じる。
(あれ?ここは何だったっけ?)
そう思った瞬間、彼は断片的な記憶の映像を見る。それは何かとても怖いもののようで、突然のできごとに少しフラついてしまった。
「大丈夫ですか?」
前を歩いていたスタッフが彼の様子に気付いて声をかけるが、レオは「大丈夫」と答える。再び後ろをついて歩き、クリスの部屋の前まで来た。
「ここです」
部屋は廊下側に大きなガラス窓があり、外から中の様子がうかがえるようになっている。
(クリス・・・)
ベッドに横たわるクリスは色々な機械を付けられ、バグのチェックが行われていた。
「どれぐらいで回復するんですか?」
「今はまだわかりませんが、数日もすれば目を覚ますと思いますよ」
「そうか、よかった」
「目を覚ましたあとは少しリハビリを行う予定になっています」
「意識が戻ったら俺に連絡をもらえませんか?」
「わかりました」
レオはスタッフへ連絡をくれるようお願いすると、病院をあとにした。自宅に帰ったあとは病院で起きたデジャヴが何だったのかについて調べはじめる。
(あれは一体何だったんだ?)
(病院での記憶ならセンスの取り付け手術をしたときのものか?)
彼は過去に自身が取り付け手術をしたときの記憶データを見てみる。だが、そこには病院で普通に過ごしていた記憶しかなく、デジャヴで感じた恐怖感が何だったのかはわからない。
(おかしい)
(でも、絶対に何かあったはずだ)
センスの中の記憶データを一通り見たあとは、外部メモリの中も漁るが、何も見つけられない。レオの疑問は強くなるばかり。
(一度ルナに電話を入れてみるか)
彼はルナに連絡を入れると、病院であったデジャヴについて説明。その内容を聞いた彼女はすぐに家へ来てくれることになった。
「デジャヴに関する記憶データはまったく無かったの?」
「あぁ、外部メモリの中も探したけど見つからなかった」
「そう、あなたの話が本当だとしたら、もしかすると記憶を消されている可能性が考えられるわ」
「そんなことできるのか!?」
「えぇ、BF Technology社ならおそらく」
レオは彼女の言葉に衝撃を受ける。自分の記憶が消されるなんて思いもしなかったからだ。ルナは少し考え込むような表情を浮かべると、何かひらめいたのかスマホを取り出し、誰かに連絡を入れる。
「リアム?今大丈夫?」
「BF Technology社のことで・・・えぇ、そう」
「これから行っても?」
「わかった。それじゃすぐに向かうわ」
彼女は電話を切ると、リアムと言う人物に会いに行くことを伝える。
「それは誰なんだ?」
「まぁ、私にとっては便利屋さんね」
「俺のデジャヴについて何かわかるのか?」
「かもしれない」
レオはルナの車でリアムの元へ向かうことに。その道中、二人はデジャヴについて話し合っていた。
「ものすごく断片的な記憶ならあるんだ」
「それはどんなもの?」
「誰かと争っているような・・・」
「それで?」
「何かから逃げてたような気もする・・・強い恐怖感も感じたよ」
「そう」
レオはタバコに火をつけると、助手席の窓を開ける。「一本ちょうだい」という仕草をするルナにタバコとライターを渡すと、再びデジャヴに関する記憶を思い出そうとする。
「やっぱりダメだ。思い出せない」
「あなたが感じた恐怖感というのはおそらく何かに襲われたんじゃないかと思うの?」
「病院でか?」
「えぇ」
「今日も病院行ったけど、とくに変わった様子はなかったよ」
「だからこそ怪しいのよ」
そうこうしているうちに車はリアムの家へ到着。二人は車から降りると彼の元へ。
「久しぶりね」
「おぉ、久しぶりだなルナ。で、そいつが?」
「そうよ」
「レオナルド・グリーンだ。よろしく」
レオのあいさつにリアムはほほ笑むと、さっそくデジャヴについてわかっていることを聞かれる。病院のある部屋の前でデジャヴを感じたこと。断片的な記憶から誰かと争ったことや何かから逃げたこと、そして強い恐怖感があったことも伝えた。
そして、それらがセンスの記憶データには存在しないことも。
「なるほどな、だからレオの記憶が消されていると」
「あぁ、思い出そうとしても思い出せない」
「その記憶は病院にいたときのもので間違いないんだな?」
「その部屋の前でデジャヴを感じたからおそらくは・・・」
すると、リアムは突然PCで何かを行う。レオとルナはそれを黙って見ていると、彼が後ろを振り返って、画面を見てみろという仕草をする。二人が画面をのぞき込むと、そこには病院のデータベースが。
「これで病院内のデータを見ることができる」
「すごいじゃない!さすがリアム」
「これでレオが手術を受けたときのことを調べてみるよ」
「ありがとう」
「監視カメラの映像も漁ってみる」
「じゃあ何かわかったら連絡をちょうだい」
「OK」
レオとルナは連絡をもらう約束をして、その日は帰ることにした。
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