第3話 4月の2「親友爆誕」
「あー……わかんねー……」
授業がわからなくてあほになって嫌われる作戦、ではなく。
高校の入学祝いに、親に俺専用のスマホを買ってもらったものの、使い方に慣れてないうえに、適当にニュースアプリを使っていたはずが、謎の広告とか、「お使いのスマートホンはウイスルに感染しており今すぐダウンロー」とかの画面が出るようになってしまった。高校はスマホ持ち込みは全然OKで、授業中にはマナーモードにすること、が決まりだった。
「こんなんなるんやったら、
「
ゲーム機の名前に反応する男子の声。顔を上げると、メガネで天パーの、、倉田ってやつだっけな。
「秋沢君、Xbox持ってるん?! シリーズS?シリーズX? もしかして、初号機?? さらにもしかして、
返事をする前に、たたみかけるように話しかけてくる。これはいわゆる、オタクってやつだろうか。
「いや、俺、入学祝いにXboxのどっちかか、スマホ買ってもらうってことになったんやけど、スマホにしたんだ」
「え~~、残念~~! でも! こんど持ってくるよ! シリーズS!」
「は? あれ、据え置きやろ? スイッチみたいに、持ち運びできへんけど……」
「ところがどっこい! ポータブルモニターシステムがあってだなぁ、それに、、」
楽しそうに話す倉田。途中からは詳しすぎてよくわからなかったが、熱く語っていたかれはぴたりと動作を止めた。
「申し遅れました! クラス紹介でもちょっとだけ言ったけど、僕は
「……はい?」
今なんて言った? 倉田は握手を求める。
「ぜひとも親友になってください!!」
「あ、ああ……」
俺としてはとりあえず普通に友達はいたほうがいいと思ったし、そして倉田のようなオタクっぽいやつとつるんでいれば、そういうのが嫌いな人からちょっと距離を置いてもらえるんじゃないかという期待もあった。しかし、あの「第1回人気調査」って何?
「秋沢君のスマホの調子が悪いんでしたっけ?」
倉田は画面ロックだけ俺に解除を頼み、その後、何回か画面をタップした。そして電源長押しで再起動、用意周到にモバイルバッテリーに接続しつつ、
「僕のWi-Fi使ってくださいね」
と、モバイルルーターまで持ち出し、その通信でアプリ・ストアからひととおりの基本ソフトやアプリを全部更新してしまった。
「はい、できた! 最新状態にしました! あと、ファミリーライセンスとかでセキュリティ対策ソフトも契約しているみたいだったんで、そっちも設定しておきました!」
「あ、ああ……ありがとう……」
「任せてください!」
倉田はドヤる。
「僕、セキュリティ関係の仕事をするのが夢なんです。まだ、サイバーセキュリティのハンティングか、研究か、そのへんは具体的じゃないんですけどね」
「お、おう……」
俺は感心した。俺なんて、まだどんなことをしたいかあんまり考えてないのに。……訊きかけたことを思い出した。
「さっきの「第1回人気調査」について聞きたいんだけど……」
「ああ、これをタップしてください!」
俺のスマホに、新しくアプリが追加されていた。グループSNSアプリらしい。倉田いわく、クラスメンバーがここで雑談とかをしているらしい。まだスマホに慣れてなかったので、みんながそういうことで騒いでいるのにもあまり気づいていなかった。
倉田の言う通りタップすると、クラスメンバーのグループが表示された。そこでは、「第1回人気調査」のトピックがあり……、
『やっぱり秋沢君』『秋沢++』『秋沢△』
「おい倉田、これはどういうことだ?!?!」
「いやー、秋沢君、クラスで一番シンプルで落ち着いてるし、自己紹介もスマートだったし、先生にもほめられっぱなしじゃないですか!」
第2位をつきはなして、クラス内第1回人気調査で俺はトップに立ってしまっていた。ていうかみんな数日しか俺のこと見てないだろ? おかしくないか??
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