第19話 彼女達では能力が足りない、私が勝たなければならない
「うおおおおおおお! 私の押しの美崎様大勝利ぃぃぃ!!!」
白ネズミさんが放映画面の中で絶叫している。
視聴者も物凄い大歓声だ。
わたしはアリナちゃんが心配で倒れて荒い息をしているアリナちゃんに駆け寄る。
「VR操縦画面消して、美崎ちゃん」
体育館の画面が消え球状機体の穴から血を流し自分の体を抱え震えているアリナちゃんの体が見えた。
「美崎ちゃん、治療できる? 空気は大丈夫? あと、わたしもそっち行きたい」
「ん」
美崎ちゃんの
槍のような剣を差し込むとアリナちゃんの座る操縦席をこじ開けた。
アリナちゃんのボディスーツから半透明のメットが覆ってるから空気は大丈夫みたい。でも肩というか左腕が無くなっている。
「美崎ちゃん!」
「ん、勝利判定は無力化、やりすぎじゃないよ」
御免でした。美崎ちゃん。
操縦席のハッチが開き、わたしは、ワタワタしながら、なんとかアリナちゃんの元に辿りついた。
近くで見ると手術の傷跡や生々しい注射痕が沢山ある。
「嫌だ、嫌だ、あそこにはもう戻りたくない」
大きく震えているよ。
わたしはアリナちゃんを抱いてあげた。
ミニチュア美崎ちゃんの顔がなんか凄いことになってる。
そうだよね。許せないよね。
こんな恐怖を女の子に味あわせるなんて許せないよ。
綺麗な肌の彼方此方に改造手術の跡。
「ん、調べた情報だと、超人研究所。それが彼女の家」
良く判んないけど、とっても酷いところってのは判るよ!
「大丈夫。日本に来ると良いよ。親戚の家のアパートに沢山空き部屋あるよ。ボロアパートだけどね」
わたしは彼女の肩を抱いて歌ってあげた。ボエ~
彼女の震えはだんだん止まり力が抜けてわたしに体を預けてきた。
「問題は彼女が沢山殺したってことだけど」
勝利を強制されてた彼女。仕方ないとはいえ、大勢殺した。
ミニチュア化した美崎ちゃんは医療技術云々言ってた。
「何とかならないかな美崎ちゃん」
「ん、記憶含めた医療データは取られたはず。クローンと記憶転写で復活は可能」
そういうと画面の白ネズミさんの方を見た。
画面の白ネズミさんは、気づいたようだ。
まぁこっちにカメラ置いてるみたいだし。
「そうですねぇ、美崎様が毎日踏んで下されば」
ハイライトの消えた凄い目で睨む美崎ちゃん。
「あっ、冗談です。勝てば官軍ですよぉ、勝てば、復活なんか余裕です。我々は仲間には寛大。少なくとも序盤のVR戦闘を勝ち残るほどには優秀な遺伝子を捨てる程馬鹿ではありません」
「勝てば、大丈夫だって、良かったね、アリサちゃん」
「私は殺しを後悔するほど優しくない」
そう言うアリサちゃんだけど、その言葉を言った時、体の力が抜けるのを感じた。
……と美崎ちゃんがポツリと言った。
「綾、これで終わりじゃない」
「これが始まり」
え、美崎ちゃん、何言ってるの?
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