第17話 亡くなってしまった友へ
人は生きていると
誰にでも【忘れられない日】【忘れてはいけない事】というものがあるんじゃないかと思う。
それは
他人から見れば、ものすごく些細なことなのかもしれないし…
当事者にとっても、時間の流れと共に…少しずつ風化していくものなのかもしれない。
私にとってのその日は
マサトと別れたあの冬の年が明けてから、約3ヶ月後のことだった。
2011年3月11日。
東日本大震災がおきたあの日…私は2人の友人を亡くした。
1人は遊び仲間で、私と同じ歳の女の子。
もう1人は、買い物に行ったお店で偶然知り合った4歳年上の先輩の女性。
同じ歳の女の子は、当時は毎日のように顔を合わせていた…。
マサトが居なくなって、心身共にボロボロだった私の隣にそっといてくれる優しい子だった。
彼女も私同様、ヤンチャではあったけれど、小さい子供が大好きで、将来は保育士さんになりたいと言っていた。
先輩の女性は、時々会うとご飯に行くとか…泊まりに行く感じの付き合いだったけれど、洋服が好きだからとアパレル販売スタッフとして働いていた人。
先輩とは、マサトと付き合っていた頃に、美月さんへの誕生日プレゼントを買いに行ったお店で知り合った。
何度か話しているうちに、彼女が私の遊び仲間の先輩だったという事がわかり、それから仲良くなった人だ。
先輩もまた、家庭環境が複雑だったこともあり、会えば私に色んな話をしてくれた。
彼女は昼間働いていたこともあり、夜中はあまり遊びには出なかったので…私とは頻繁に会うわけではなかったけれど、私がマサトと別れたことは仲間から聞いて知っていたので、当時はよく『 気晴らしに行こうよ~!』と、ご飯に誘ってくれた。
先輩と最後に会ったのが、3月3日。
『 今日は雛祭りだよ~!美味しいの食べよ?』と、夜ご飯に誘ってくれて、その日は先輩の家に泊まり、翌朝『 近いうちにまたご飯行こうねっ!』と笑顔で別れた。
同じ歳の女の子とは、震災の日の前日も会っていた。
これといって何をするわけでもなかったけれど、なんとなくそばにいてくれて、別れたショックで食べることが出来なかった私に、彼女の趣味でもあるホームベーカリーで焼いたパンを渡してくれた。
『 これ、ものすごーく小さくしてあるから、少しずつでも食べなよ?』
そう言って優しく笑う彼女の笑顔を…私は今でも忘れることはない。
もしもあの日がなければ、彼女達はきっと今でも生きてくれていただろう…。
もしもあの日がなければ、私の運命は今とは何か少し違っていたのだろうか…?
あの日、亡くなってしまった命は…彼女達だけではない。
たくさんの人の命が、たくさんの人の未来が、たくさんの人の笑顔が…あの日、あの瞬間に失われた。
悔しいのも悲しいのも、私だけではない。
私よりも悔しくて悲しいのは、おそらく亡くなった彼女達だろうと思う。
まさかあの日、自分が亡くなるだなんて思ってもいなかっただろうから。
いつか、私が彼女達のもとへ逝った時は…また話したいなって思う。
その時はまた、あの笑顔で笑ってくれるかな?
彼女達の死を知っても、泣くことさえ出来ずに、ただただ呆然としていた私を…許してくれるかな?
マサトが居なくなって、全ての感情に蓋をした私は…彼女達が亡くなったと知ったあの日でさえ、泣けずにいたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます