第27話 Cランクダンジョンボス

 Cランクダンジョンも終盤に来ていた。

 今の十九層はオーガが群れで出てきてパーティを相手にするような感じになっている。


「もうすぐだ! 気張るぞ!」


「うん! もう少しだから気を抜かずに頑張ろう!」


 賢人と僕で猛と奈々を鼓舞する。

 スキルをかなり使ってるこの二人はそろそろ限界を迎えつつあった。


「【不動明王】」


「行くよ! 炎石!」


 猛が前でオーガのパーティを抑える。

 そして、後ろから炎を纏った石が次々とオーガに飛んでいき、貫いている。

 そして、身を焦がしていく。


「【八叉やしゃ】」


 魔法から逃れていたオーガの残りを八つの突きを放ち絶命させる。

 このダンジョン攻略の間にも僕達は成長を遂げていた。


「【整理】オーガを入れたら【閉じて】」


 オーガの下に出現した穴はオーガ達を吸い込むと自動で閉じた。

 このスキルも日々成長している。

 最近は自動化出来るようになってきた。


「階段だ! 降りるぞ?」


「待って! 少し休憩しよう?」


 僕はみんなが疲れを少しでもとって欲しくて休憩を提案した。

 そういえば、奈々の母親を見ないな。

 まぁ、気にせず行こう。


「なぁ、ここからは配信しないか?」


 賢人が突然提案した。


「どうして? ここからの配信誰か見るかな?」


「分かんねぇけど、初のCランクのボスの記録も兼ねてさ」


 確かに取っておいて後から見るのは役に立つかもね。

 やってみようか。


「いいっすよ。じゃあ、ここからはBOT起動しますよ?」


「うん。奈々、体力持ちそう?」


「うん。大丈夫だと思うわ」


「よしっ! じゃあ、行こう!」


 ここから配信を開始し、ボスの間へと入っていく。


 すると、後ろから何かが投げ込まれた。

 咄嗟に振り返ると黒い影が去っていく。


「なんだありゃ!?」


 賢人が驚いている。

 投げ込まれた物はボスとして配置されていたオーガキングとオーガ達の前に行くと鈍い光を放った。


「ガァァァァァ!」


 オーガキングが突如錯乱を始め。

 隣にいたオーガを掴むと飲み込み始めた。

 周りにいたオーガは十体だったが、全てのオーガを飲み込んだ。


「アガァァァ……ガガァァァア」


 身体は徐々に肥大化し、大きくなっていった。

 左右二本だった角が眉間からも角が生えて三本になり、鋼のような肉体になった。


「おいおい。ありゃ、オーガロードじゃねぇか? こんなの聞いてねぇよ」


 あれは明らかに投げ込まれた物のせいだろう。

 人為的な事象である事に間違いはない。


「オーガロードってAランクだっけ?」


「あぁ。二ランク上だとかなり辛いぞ?」


「だね。でも、生きて帰るにはやるしかない」


「だな」


 気合いを入れ直して構える。


「ガアアァァァァァ!」


 突如、オーガロードが突っ込んできた。


「来るぞ!」


「任せるっす! 【不動明王】」


ドガァァァァンッッッ


 凄まじい衝撃が走る。

 猛はビクともしない。


「ビリビリ水!」


 奈々がここで物理系は効かないと判断したのだろう。

 雷を纏った水が射出された。


バリバリバリバリッッッ


「ガガガガガァァ」


 オーガロードは僅かに身体を震わせて動きを止めた。

 ここだ。


「おおぉぉぉ! 【首天胴地しゅてんどうじ】」


 首に赤い筋が入る。

 筋肉が硬すぎて刃が入らない。

 浅い。


「まだまだだぁ! 【八叉やしゃ】」


 八つの突きが放たれるが、これも浅い。


「ガァァァ!」


 動けるようになってしまったオーガロードの拳が振るわれる。

 オーガロードの正面にいた賢人がまともにくらってしまった。


「ぐぅぅぅっっ」


「賢人!? まずい! 【整頓】」


 賢人の位置を僕の近くに戻す。

 その隙に。


「奈々、回復をお願い」


「わかった」


 前を向くと賢人を見つけたオーガロードが猛の横を抜けてくるところだった。


「【整頓】」


 猛の位置をオーガの目の前に移動する。

 これで止まる────。


「ガァァァッ」


 オーガロードは飛び上がった。

 やられた。

 猛のスキルの弱点。

 上は抑えられない。


「はっ!」


 時間稼ぎにナイフを投擲する。


 なんでもないかのように手で払われる。

 もう一度。


 迫るオーガロードの目を目掛けて放つ。

 また手で払われた。

 だが、投げたのは一本ではない。


「ガァァアッッ!」


 目を抑えて悶えるオーガロード。

 僕は同じ軌道で二本のナイフを投げていたのだ。

 もう一本には気づかなかったみたいだね。


 立ち止まった。

 時間稼ぎは終わり。

 ここからは僕達の時間だ。


「【整頓】」


 オーガの前に再び猛を配置。

 その横には復活した賢人。

 後ろに僕と奈々。


「奈々、ナイフ狙って」


「ビリビリ水いけ!」


 オーガロードが悶えている目のナイフに雷を纏った水がかかる。

 その瞬間、激しい電撃が迸る。


「ガアァァァ!」


 震えながら暴れ回るオーガロード。

 このままだと攻撃できない。


「【シールドバッシュ】っす!」


 猛が盾をぶつけて押さえ込んだ。

 動きが鈍くなる。


「賢人!」


「任せろ!」


 返事をすると同時に地面を蹴り、跳躍する。

 そして、オーガロードも蹴って高く跳躍する。


 クルクルと縦に回転し始めた。

 その勢いのまま。

 降ってきた。


「ああああぁぁぁぁ! くらえぇぇぇぇぇぇ! 【天邪駆あまのじゃく】」


 オーガロードの脳天をかち割る。

 そのまま勢いは止まらない。


ズバンッッッッ


 オーガロードは縦に真っ二つになり。

 ボスは討伐された。


「っしゃあぁぁぁぁおらぁぁぁ!」


 高くガッツポーズをとる賢人。


 僕は奈々と猛の肩を叩き健闘を讃えた。

 賢人の元へ行き、ガッチリと手を組む。


「賢人なら決めてくれると思ってた」


「収斗なら時間稼いでくれると思ったぜ」


 この映像は配信され。

 反響を呼んだのであった。

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