第9話 不満

「はぁ…はぁ…はぁ…いっぱいしたな、夏美」

「う、うん……そうだね」

「……」


 今日、俺たちはラブホテルの中で激しい運動をした。

 しかも生だ。

 

 そう、大好きな夏美カノジョと生でシちゃったんだ。

 

 夏美と生でするの最高だったな~。


「なぁ夏美」

「ん? なに?」

「俺と颯太、どっちの方が気持ち良かった?」


 俺がそう言うと、夏美は複雑な表情になる。

 俺の質問に答えたくなさそうだった。


「なぁ教えてくれよっ。俺と颯太、どっちの方が気持ち良かった?」


 俺の言葉に夏美は目を逸らしながら「裕也くんの方が気持ち良かったよ……」と答えてくれた。

 嘘をついているように見える。


 たぶん、夏美は俺に気を遣って嘘をついている。

 本当は颯太とエッチする方が気持ちいいんだろう。


 そっか、颯太とエッチする方が気持ちいいのか。

 めっちゃ悔しいなぁ……。


「正直に答えてくれ、夏美。本当は颯太とエッチする方が気持ちいいんだろ?」

「そ、そんなことないっ! 裕也くんとエッチする方が気持ちいいよっ!」

「それ本当か……?」

「うん……颯太くんより裕也くんとエッチする方が気持ちいいよ。だから、もう一回アタシのこと求めて……」


 夏美の言葉に俺は「へ……?」と間抜けな声を出してしまう。


「お前、まだエッチできるの?」

「うん……まだまだできるよっ。つか、たった一回じゃ満足できないよっ。ねぇお願いっ、もう一回アタシのこと求めてぇ……」


 おいおい、マジかよ。

 夏美のヤツ、まだエッチできるのか。

 相変わらず、凄い体力だな。


「すまん、夏美、もう無理だ……」

「え? なんで……? なんでアタシのこと求めてくれないの?」

「……もう体力がないんだ。悪いけど、今日は諦めてくれ」

「そんな……」


 本当はもっと夏美とエッチしたいけど、もう体力がないんだよな。

 賢者タイムがキツすぎて、もう一歩も動けない。

 

 ごめんな、夏美……。

 今日は諦めてくれ。





 ◇◇◇



【夏美 視点】




 久しぶりに大好きな裕也くんとエッチしたけど、全然気持ち良くなかった。


 ぶっちゃけ、颯太くんとエッチする方が気持ちいい。


 あと、裕也くんはたった一回しかアタシのこと求めてくれないの。

 颯太くんは朝までアタシのこと求めてくれるのに……。

 

 昔は裕也くんとのエッチで満足していたけど、もう無理だっ。

 アタシ、裕也くんじゃダメだ。

 颯太くんの身体じゃないと満足できないよっ。


「ん?」


 突然、颯太くんが電話をかけてきた。

 珍しい、颯太くんからアタシに電話してくるなんて……。

 なんでアタシに電話してきたんだろう?


 とりあえず、アタシは電話に出た。


『もしもし、夏美ちゃんか?』


 スマホのスピーカーから颯太くんの声が聞こえてきた。


「うん、アタシだよ。どうしたの、こんな時間に」

『その……よかったら、今からエッチしないか……? あっ、もちろん嫌なら断ってもいいよ』

「ううん、全然嫌じゃないよっ。アタシも颯太くんとエッチしたかった」

『え? マジで? 俺とエッチしたかったの?』

「うんっ……早く颯太くんとエッチしたいよっ」

『ははっ、相変わらず夏美ちゃんはエッチだな』

「っ……も、もうっ! アタシがエッチになったのは颯太くんのせいだよ? 分かってる?」

『いやいや、絶対俺のせいじゃないだろ。夏美ちゃんはもとからエロかったって』

「そんなことないもん……全部颯太くんのせいだもんっ」


 そうだ、アタシは何も悪くないっ。

 悪いのは颯太くんだ。


 颯太くんのせいでアタシはエッチな女の子になっちゃったんだよ?

 君のせいでもう裕也くんの身体じゃ満足できなくなったんだよ?

 責任取ってよ……。


 

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