大好きな彼女に裏切られた

理亜

第1話 ドン引き

「頼むっ! 俺の彼女とセックスしてくれっ!」

「は……?」


 友達――裕也ゆうやの言葉に俺は思わず目を丸くする。

 俺の彼女とセックスしてくれだと……?

 コイツ、何言ってんだ?


「えーっと、どういう意味だ……?」

「そのままの意味だ。頼む、颯太そうた! 俺の彼女とセックスしてくれっ!」

「……」


 コイツ、マジで何言ってんだ?

 頭大丈夫かな……?


 コイツの名前は佐藤さとう裕也ゆうや

 俺の友達だ。

 俺と裕也は高校の入学式の時に仲良くなったんだ。


 混乱している俺に、再び裕也が話しかけてきた。


「なぁ頼むよっ、颯太そうたっ。俺の彼女とセックスしてくれっ……。こんなこと頼めるのお前しかいないんだっ」

「……えーっと、つまり夏美なつみちゃんとセックスしてほしい、ってことか?」

「ああ、そういうことだっ!」

「……」

 

 裕也には彼女がいる。

 彼女の名前は藤本ふじもと夏美なつみ


 中学二年生の頃、裕也と夏美ちゃんは恋人になったらしい。

 告白は裕也からしたそうだ。


 夏美ちゃんは本当に美人だ。

 しかもスタイルまで抜群なんだ。


 夏美ちゃんは男子生徒に人気があり、最近男子の間で行われた『可愛い女の子ランキング』では一位だったらしい。

 そんな凄い子と裕也は付き合っているんだ。

 

 ぶっちゃけ、羨ましい……。


「なんで夏美ちゃんとセックスしてほしいんだ? 何か理由があるんだろ?」

「それはその……」


 俺の問いに裕也は黙り込む。

 答えずらそうだった。


 謎だ、どうして裕也は『俺の彼女とセックスしてくれ』と頼んできたんだろう……?

 マジで意味が分からない。


 しばらくして裕也は口を開いた。


「俺さ、寝取られ願望があるんだ」

「寝取られ願望……?」

「あぁ……夏美が俺以外の男に抱かれるところを見てみたいんだっ。だから頼むっ! 夏美とセックスしてくれっ!」

「……」


 おいおい、マジかよ。

 裕也は寝取られ願望があったのか。


 前から裕也は変態だと思っていたけど、まさかここまで変態だったとはな……。

 正直、ドン引きだ。


「えーっと、つまり、裕也は俺と夏美ちゃんがエッチしているところを見たいってことか……?」

「うん! 見たいっ!」

「……それマジで言ってるのか? 自分の彼女が他の男とエッチするんだぞ? そんなの見て何が楽しんだ……? 辛いだけだろ?」

「確かに、夏美が俺以外の男とエッチするのは嫌だな……ぶっちゃけマジで辛い」

「なら……」


 俺の言葉を遮るように裕也は口を開いた。


「確かに自分の彼女が他の男に抱かれるのは辛いよ。けどそれ以上に興奮するんだっ。昨日もお前と夏美がエッチしているところを妄想しながらオナニーしたよっ。あれは最高だったなぁ。めっちゃ興奮したよっ!」

「……」


 自分の彼女が他の男に抱かれているところを見て、裕也は興奮しちゃうらしい。

 へ、変態だ……。

 変態すぎるぞっ、この男。

 まさか、ここまで性癖が歪んでいるとはな……。

 

 俺は寝取られ願望がないので、裕也の気持ちは全く理解できない。


 普通自分の彼女が他の男とエッチしてたら、辛いだけじゃないか?

 けど裕也は違うらしい。

 辛いけど、それ以上に興奮するみたいだ。

 頭おかしすぎるだろ……。


「なぁ頼むよっ、颯太そうたっ。夏美とエッチしてくれっ」

「……」

「マジで頼むっ、こんなこと頼めるのお前しかいないんだ……。俺の夢を叶えてくれっ」


 そんなに夏美ちゃんとエッチしてほしいのか。

 コイツ、本当に頭おかしいなぁ。

 

 どうしよう……。

 夏美ちゃんとエッチしようかな?

 けど夏美ちゃんは裕也の彼女だぞ? 


 本当に彼氏持ちの女の子とエッチしていいのかな……?

 抵抗感がある。


「本当に夏美ちゃんとエッチしていいのか?」

「おう、もちろんだっ!」


 俺の言葉に裕也は即答した。


 そんなに夏美ちゃんが俺に抱かれるところを見たいのか。

 コイツ、マジで変態だな。


 俺は「はぁ……」とため息を吐いてから口を開いた。


「……分かった。夏美ちゃんとエッチするよ」


 俺がそう言うと、裕也はキラキラと目を輝かせる。


「マジで!? 夏美とエッチしてくれるの!?」

「ああ、するよ……」

「おおぉぉぉぉ~! ありがとうな!! 颯太っ!」

「……」


 来週の土曜日、裕也の彼女とエッチすることになった。

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