TOKYO SUBWAY

ぬま_FJH

オレンジ色の未来の光

 彼氏とデートで赤坂にあるフレンチディナーに誘われて、私はウキウキしつつ牛田の自宅から出発。

 なんども見慣れたスカイツリーを横目に隅田川を渡り、浅草で地下鉄に乗り換える。

 地下鉄の入り口はいつも使っている通路だけ薄暗く、昭和の香りを令和に残してくれている。たまにお客さんがいるお店たちを横目に、最近リニューアルされた令和の真新しい浅草駅から、ICカードで改札を通り渋谷に向かう列車に乗り込む。


 ホーム上には鉄道が好きな方々が撮影をしている。ちょうど、レトロ調らしい車内の列車に乗り込む。

 今回は、赤坂だが溜池山王で降りても目的地までの距離は変わらない。

 赤坂へは行かないこの路線だが、東京の地下鉄は隣接している駅があるケースが多いから、そこを使いこなすのがポイントだと大学進学と同時に上京、そのまま社会人となって10年になって学んだこと。

 都内育ちで32歳になった彼氏からしたら、当たり前すぎるかもしれないけども、昔から変わらない田園風景の中で育ってきた私からしたらすごいことなのである。

 なんせ、バス停だって次のバス停まで歩くと15分以上かかるんだもん。


 何事もなく地下鉄は動き出して次の田原町に到着し乗客を乗せて動き出す。

 地上の路線にはない、乾いたリズミカルな音に揺られて溜池山王まではウトウト眠気に負けることにした。


 不意に目が覚めると車内には袴と帽子をかぶった人ばかりである。中にはパイプを手にしている人がいる。

 さらには時より車内の電気がついたり消えたりを繰り返しているが、車内では誰も驚かない。稲荷町を出て上野に到着したようだ。

 ホームには角ばったデザインになった乗っている地下鉄の車両の絵が掲げられているのと合わせ、「のへう」と掲示されており、ホームでは万世橋行きだと駅員が言っていることに対して疑問に思いつつ眠気にやられる。

 

 次に起きたら上野広小路、末広町は過ぎていて神田に到着をしていた。

 窓の外を見ると向かいに緑色の電車が止まっており、乗り間違えたかと思ったが、緑色の路線は神田には来ないから気にしないでおいた。最近は直通とかで色々な列車が来るからきっとそういうことだろう。

 東東京にある牛田駅を西東京のおしゃれタウンであるニコタマの電車が通過する時代だもん。

 車内に目をやると、女性車掌がドアの横に立って何やら操作をしている。車内の乗客も男性がほとんどいなくなった。服装がさっきまでの袴とも、浅草に行く途中の不況である現代とも違う方向で暗い服装がほとんどである。

 笑顔を誰も見せず、子供が喋れば全員がにらみを利かせている。こういう時は知らないふりをして目をつぶるのが吉である。


 三越前、日本橋、京橋と過ぎて銀座に電車は滑り込む。

 さっきまでが嘘のように車内には外国人がたくさん乗り込んできた。

 車内では数少ない日本人が去年は京橋駅で爆発があったと物騒な話をしているかと思えば、オリンピックがこれからだと、話をしている。

 東京オリンピックはすでにやっているはずだが不思議に思いつつ、屋根には扇風機が回っている。

 

 また、寝ていたようだ。起きたら新橋を出ていた。車内にはカラフルなスーツを着た人が車内を彩る。

 車を買っただの家を買っただの、今夜はオールでクラブではしゃぐだのと、私やその周りに縁遠い景気のいい話ばかりが飛び交う。

 私は野菜が10円値上がりしただけで悲鳴を上げているのに羨ましい限りである。努めている職場の先輩や上司ですら、給料が上がらないと泣いているのを目の当たりにして暗くなっているのに……。

 世の中を憂いていたら虎ノ門である。その次が目的地、溜池山王である。

 

 電車がもともと、溜池山王がなかったかのように赤坂見附への放送が入る。

 起きていたはずなのになぜか降りれなかった。まだまだ、約束の時間まではあるから、このまま渋谷で買い物をしようと思い、このまま乗っていく。

 赤坂見附では向かい側に真っ赤な列車が止まっている。職場の鉄オタ同期曰く新型らしい。

 私の乗っている電車も赤い電車も長いこと止まっている。

 どうやら、いろいろなところで人が倒れてるらしく安全確認をしていると、放送が入った。

 最近は、車内で刃物をもって暴れたり、燃料をまいたりという行為が多いので気を付けようがないが気を付けたいことが続出している。

 今回も、被害者にならなかったことへの感謝と被害者へのお見舞いを念じつつ、運転再開を待つ。

 乗っている電車は問題なさそうとのことで動き出す。


 再び、心地よい居眠りについて、青山一丁目、外苑前、表参道を過ぎて渋谷に到着する。

 「お客さん終点ですよ」

 突然の呼びかけに驚いて、列車を降りて薄汚い降車専用ホームに降り立ち百貨店の階段をヒールの音を響かせて下る。

 降りた列車はステンレスにオレンジ色の帯をまとっていた。渋谷の駅に着く前には高架橋から見える青空を反射させながら……。

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