十四話 子殺し

 友である2人を失ってなお目の前の少女は目の前の怪物を敵意の籠もった瞳で睨んでいる。


 2人の死体を抱いた少女は我を失う我でもなく、絶対に呑まれるわけでもなくただ目の前の敵に憎悪を送り続けている。


 一歩、また一歩と進む。


 少女は睨む。


 進む。


 睨む。


 少女は死が眼前に来ようとも睨む。


 刃と化した手を振り上げる。


 少女は睨む。

 


用語説明、

HP=体力 MP=魔力量 

STR=物理攻撃力 INT=魔法攻撃力 

DEF=防御力 AGI=素早さ



 この小説では魔法は《》、スキルは【】を使って表しています。




 「《土精霊の加護プロビデンスオブノーム》」


ぼこぼこと地面に穴が開く。その中に3人の遺体をそっと寝かせる。


 せめてこの3人があの世でも再開できるように。


 バエルは自分の手を見る。

 血に濡れている。

 罪悪感はあっても後悔は無い。


 殺し合いに同情を持ち込んだら命がいくつあっても足りない。

 それに我も生きるのに必死なのだ。

 彼らからしたらとばっちりだが、納得してもらうしかない。

 

 

 魔王の悪名を世界に轟かせるために生物を殺し尽くした。


 その中には老人や女子供も居た。

 それらは簡単に死んだ。

 魔法一つで何十人と死んだ。

 

 しかし、その何十人のものよりも3人の子ゴブリンを殺した時の方が心に来るとこがある。

 

 魔王の座から降りるー正確には強制降格ーと、魔法が使えなくなった以外にも弊害があるのか……


(身勝手だな魔王の時と考えが全く違うとは)


 ゴブリンの死を悼むわけでも無いが、うーん…なんと言うか、眩しかったな。


 純粋なけがれのない魂が。

 

 弱者は幼く弱い子供でも殺さないと生きていけない世界か。


 まさしく地獄ヘルと呼ばれるに相応しい。

 

 よって第一目標は強くなって地位を確立させることにしよう。

 そしてこの世界でも生活できるようになる。

 

そこに子供を殺したくはないという私情が混じっていることにバエルは気づかない。


 二つ目は、そうだなぁ。周辺の地理を見て回るかな?

 いずれ来たる人間との接触に向けて!        

 

 三つ目は………無いかな、うん。


 まずは一つ目の戦力に関してだが、

「《審判ジャッジメント》」


バエル=オルゾビュート・デメキシス

Lv109 種族 龍種   職業 破損

HP70056 MP5420 STR6291 DEF2254

AGI5279 INT6419 AGI6042

スキル一覧

剣技Lv1 燃え上がる闘志Lv1 破損 破損 破損 破損 破損 断罪(封印) 破損 …

全スキル表示↑

称号一覧

子殺し 井の中の蛙 破損 破損 

断罪者(封印) 破損 破損 破損…

全員称号表示↑




 レベルが99を突破した。

 称号を手に入れた時点でレベル上限値が開放されているとは知ってはいたが、こうして目に見えるのはモチベーションがあがるな。

 

 10レベル上がるとステータスが200くらい上昇した。単純計算すると1番高い攻撃力を大体150レベルは上げないと元の9999には戻らないのか。

 

 これは……果てしなく長い道のりになりそうだな。

 果てしなさすぎてその前に死んだりしないよな、我。

 

 そんなネガティブ思考に囚われていたが、違うことを考えて気を紛らわそうと思考の海に再度潜る。


 しばらくしたら大人のゴブリン達が子供がいないことに勘づき探しにくるだろうから長居は出来ない。


 あの襲われた馬車の跡を追えばそのうち人間の都市に行くことができるだろうか。


 ダメだな。


 あの盗賊の様な奴が都市にはごろごろ居るかも知れないし、この世界の常識が分からない我が行っても良い運命は待ってはいまい。


 とすると、森に暮らした方がいいのか?

 中にはデッドイーターのような規格外の魔物が跳梁跋扈ちょうりょうばっこしているけれども。     


 人などの高度な文明圏では殺したりすると足がつきやすい。

 しかも他の種族と比べると人型の生物は情報がすぐに広まるし、悪評が立ってしまう。


 それに文字も我のいた世界と同じものかも分からない。


 人の世界で文字がかけない奴なんて路地裏出身か田舎者ぐらいだろう。

 そんな奴らと一緒にされるなんてごめんだ。


 そもそも言葉すら分からん可能性もある。

 言葉も分からない得体の知れない者なんていい様に利用されるか、捕まえられて処刑がいいとこだろう。


 よって多少危険でも森の中で生活した方がいいと思われる。

 この辺りの地図作りも始めたい。


 たまたま見つけた文明に考えなしにいったら戦争の最中で巻き込まれて死んだなど、冗談でも笑えない。


 色々と見聞を広げれば好条件な種族も見つかる。 

 

 とりあえずゴブリンの縄張りからは距離を置いた方が良いだろう。

 

 「南にある平地は見つかりやすいし、北に行くか。」


「鬼の子達よ、見事だった。」


 ゴブリンの子供達の墓に一礼した後、バエルは北へと向かった。


 

用語説明、

HP=体力 MP=魔力量 

STR=物理攻撃力 INT=魔法攻撃力 

DEF=防御力 AGI=素早さ



 この小説では魔法は《》、スキルは【】を使って表しています。

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