六話 嵐の前触れ

 ドスン!ドスン!と大きな足音を立ててまっすぐ盗賊に向かって行くボスジャイアントフロッグ。


 「さあ、ここで我らの力を見せつけてこの世界をカエルの恐怖に陥れるのだ!」


 魔王は5体めの囮を殺し視界に映った盗賊の元に向かって行くジャイアントフロッグを激励する。


 「ククク、カエルに襲われる絶望した我の気持ちを100分の1でも体感して死ぬがよい薄汚い盗賊ども! 

 そしてカエルよ……

 奴らを虐殺した暁には我が魔王軍(現在0名)の幹部の座をくれてやろう。

 そしてカエル使いの魔王として世界の頂点に君臨するのだ!」


 などとバカなことを言っているうちにボスジャイアントフロッグが盗賊たちに接敵する。




 「あっちゃー、ジャイアントフロッグ、ありゃボスですな。どうしますお頭ー?」


 「あ"〜ん、んだよ〜間が悪いなぁ〜」


 毛むくじゃらの手で眼帯をかけた盗賊のボスが頭を掻く。


 「おい!馬車ぁ〜見張っとけぇ〜。

ボスジャイアントフロッグは俺がぶち殺すからなぁ〜」


 盗賊のボスは武器の双剣の内、一本を抜き取る…


 盗賊ボスが一気に走り出す!


 ジャイアントフロッグは近付かせまいと舌を鞭のように振るう。  


 盗賊ボスは迫り来る舌をバラバラに切り飛ばす!


 風を切り裂くような速さで間合いに入り込む


 「【疾風切り】」


 カエルの体がみるみる小さくなっていく。

 やがて肉団子へと姿を変えた。


 「ふい〜、やっぱぁ〜雑魚を殺すのはぁ〜、気分が良いなぁ〜」


 そこに息を切らした子分の盗賊が駆け寄る。


 「大変です、お頭!騎士の奴らが向かって来やがります!」


 「んだとぉ〜、ちくしょう。後少しで任務を遂行出来たのによぉ〜。

 こいつのせいでぇ〜!」


 盗賊ボスは怒りに任せて地面を蹴り上げる。

 地面がえぐれ、土煙が舞う。


 「やっぱりおかしいですぜお頭。

 こいつは自分より強い奴からは攻撃されない限り襲わないくらいの知性はありますぜ?

 もしかしたら誰か邪魔したのかも知れません」


 「何だとぉ〜!どこのどいつだ!俺がぶっ殺してやるぅ〜‼︎

 テメェら、ずらかるぞぉ〜」




 魔王バエル=オルゾビュート・デメキシスは全力で走る。


 息が切れることはないがあまりの絶望に胃の中の物が這いあがろうとして酷い嗚咽感に苛まれる。


 気付けばカエルを誘導する時に使った道から大きく外れているようでここがどこなのかもわからない。


 バエルは先ほどのことを思い出す、カエルの体を切り刻んだ膂力、カエルの舌を切り落としたあの動体視力……絶望がまた一気に押し寄せてバエルを呑み込もうとする。


ピロリン『【不屈の闘志】が発動しました』


前に我の中で野心が燃える。


 その炎は絶望の波を燃やし尽くし対象者を炎の様に燃え上がらせる。


 そうだ、我はこの世界の王になる存在こんなところでたたらを踏んでいるわけにはいかないのだ!!


 だが、そんな中にも一抹の不安が胸をよぎる。

 

 我の呟いた声は響くことなく風に流されていった


「コレが『ヘル』の世界か…」


用語説明、

HP=体力 MP=魔力量 

STR=物理攻撃力 INT=魔法攻撃力 

DEF=防御力 AGI=素早さ



 この小説では魔法は《》、スキルは【】を使って表します。

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