最弱魔王の鬼畜世界放浪記

@karakorokara

プロローグ 歪みの始まり


「さあ!ついにここまで来たぞ魔王!」


「フッフッフ、やるではないか勇者よ…それほどの才能をここで殺すには惜しい。

 どうだ?我が部下になるならこの世界の半分をくれてやろう」


 断罪の魔王バエル=オルゾビュート•デメキシスは重々しくも優しい口調でそう告げた。


「誰がそのような戯言に耳を貸すか!

 お前を打ち破りこの世に争いのない平和な世界を作るのだ、そうだろう皆んな!!」


 魔法使い「ええ!もちろん!」

 僧侶「もうこの世界で悪さは起こさせません!」

 戦士「おうよ!準備バッチシだぜ!!」

 勇者は胸を熱くする。

 こんなにも頼もしい仲間ができたこと。それに、

   

   このゲームをクリアできることに


 2074年あるゲームが世界を震撼させた。

   

『closed world』それを創り出した無名の制作会社は世界一の技術力の称号を欲しいままにした。


 専用の機械を使って仮想現実の世界に入り、冒険する、VRMMORPG。

 『closed world』は、星の数ほどあるそれらのゲームの中でも5本指に入るほどの、グラフィックを誇り、NPCが完全に人間と同じ思考回路を持った人工知能を搭載されていると言う今までのゲームとはまさに次元が違う、一目置かれた存在として世界中で称賛された。

 

 それに完全ソロゲームであり、プレイヤーの一人一人が別の世界を旅することができるのだ。

 

 あるものは砂漠の世界を、またあるものは海の世界を、共通する事は、自分が勇者となり、魔王を倒すことを旅の目的とすることだけだった。


 故に攻略法なんかはプレイヤーによって変わってゆくから、基本的な操作法方しか載せることが出来ない攻略サイトには閑古鳥が鳴いていた。

 

 そのゲームが人を狂気の渦に巻き込んで行くのにそう時間は掛からなかった。

 

 しかし、そのゲームにはもう一つ裏の顔が存在した。

 『究極の理不尽ゲー』

その悪名はNPCが人間と同じ思考回路であることに由来する。

 

 クエストの大事な部分で助っ人であるNPCが食中毒で帰ったりするのはまだかわいい方で、ひどい時には幼い少女が倒れていて大丈夫かと近寄ったら「変態!」と叫ばれて警備兵にしょっ引かれていって全財産を没収されたと言うケースもある。

 

 そのため攻略掲示板の代わりに『僕の、私の酷い扱い日記』なる、自分の受けた理不尽を書き込む掲示板が台頭した。


 

*******************************

魔王と勇者の戦いは苛烈を極めた。


「《聖なる剣ホーリーセイバー》!!」

 

 勇者の剣から放たれた白い斬撃が魔王の腕を切り飛ばし、魔法使いが放った魔法が魔王の太ももに風穴を開ける。


「みんな、あと少しだ!」


 戦士は勇者と共に着実に魔王の体に傷をつけていく。

 魔王がどれだけあがいても勇者たちの勢いは止まらない。

 ついに魔王が膝を地面につけた。


「頼む!ことの通りだ!

 もう悪いことはしないし、人には近づかない。

 何が欲しい、金か?女か?地位か?何でもするから命ばかりはみのがしてくれ!!」

 

 最初の傲慢さが完全に抜かされた無様な様子をさらしながら魔王が土下座して命乞いをする様子を見て勇者の中に歓喜が巻き起こる。

 ついに『究極の理不尽ゲー』をクリアできるのだ。


 勇者は頬が緩むのを我慢し、


「魔王…お前も終わりだ。もうこの世界に悪しき存在はいらない!」

 

 決まった…。プレイヤー


「そうか………わかった。残念だよ《完全邪悪治癒パーフェクトイビルキュア


 魔王の腕が再生し、おびただしい傷も綺麗に無くなった。


「なっ!?何が起こった」

 

 何が起きたか理解できず、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

 その混乱も次の瞬間には霧散した。


 突如、体が焼けるような感覚、そして続いて激痛が勇者の体を襲った。


「ぐぁぁぁぁ!」


 混乱が再び戻ってくる。


「少し早いのではないか?もう少し待ってからの方が面白かったと言うのに、」


 魔王が何かを言っていたが痛みで耳に入ってこない。

 


「申し訳ありません。魔王様」


聞き慣れた声がした。

 それは…………魔法使いの、ありえないありえないありえないありえない嘘だ嘘だうそだウソダ…


「僧侶!傷を回復させろ!」


 この勇者はclosed worldをしているだけあって行動は迅速であった。


 裏切りは日常茶飯事であったからすぐにスイッチが入った。


 魔法使いが寝返ったとなればメイン火力が失われる。

 回復した魔王を倒すことは不可能だ、そうなれば次の行動は決まってくる。


 「戦士!!

 魔法の袋から帰還石をだせ!!

 僧侶早く回復をよこせ!!!」


 だが、彼の指示が実行されることはなかった。


「何をぼさっとしている!!」

 

 代わりに帰ってきたのは今までいつも慈愛に満ちていた僧侶から聞いたことのないぐらいの冷たい声だった。

 

「勇者様、私のこと…好きですか?」


「何を言っている、早く回復を「私のこと好きって言ってくれましたよね♡ ず〜っと一緒にいてくれるって言ってくれますたよね。

 魔王様から聞きましたあなたは『ぷれいやー』と言う存在で遠く離れたところから操っていたんだとか…」


 勇者は言葉を失った、僧侶が命令を無視して立っていることよりもこの世界がゲームであると言っていることが理解で気なかった。


 通常、この世界のNPC達は本物の人間の思想を持っているが一つだけ異なることがある。

 それは『自分達がいる世界はプログラムされたゲームに過ぎない』と言うことを信じないと言う点にある。

 

 全NPCに施されたプログラムは絶対的なものであり、揺らぎようのない世界の法則である。

 

 実際、この勇者も興味本位で君達がいるこの世界はプログラマーによって創られた、ただのゲームにすぎないと複数の人に伝えたことがある。


 しかし、どれだけ頑張って説明しても一貫して

 「そんなわけないですよ、勇者様」

 とかえってきたのだ。


 だからこの僧侶の言っていることはありえない、いや…あってはならないことなのだ。

 そのようなことを考えている間にも僧侶はお構いなしに話す。

 

「勇者様は好きと言ったじゃないですかー♡

 嘘だったら後でお仕置きですヨー♡

 私はあなたのことを心から愛していました、

 ホントのホントに愛してました。

 なのにこんなことってひどいんじゃないんですかー?♡

 でもそんなところもダイスキです♡

 あなたが例え私のことを愛していなくても、私はあなたのことを愛してますよー♡」


僧侶は氷のように冷たい声でそう言った。

 「私、わかったんです…本当の愛が………あなたとの子供がお腹にいるんです♡

 だからこれからは私とあなたと私たちの赤ちゃんで一緒に暮らすんです♡

 でも愛は互いの同意が無いと成り立たないんです!知ってましたか?

あなたを殺して、その死体に保護の魔法を掛けて一生愛し合いましょうね♡」


 勇者は恐ろしくなった、この僧侶も魔法使いも戦士も魔王もそしてこの世界も……




ピロリン!『ゲームキャラクターが死亡しました。ロード中です電源を切らずそのままお待ちください。切った場合データが破損する恐れがありまー』

ブチっ!


*********************************

はじめまして、どうも作者のからころからです。常日頃から作りたいと思っていたラノベを書くことができました。この作品は重めと軽めのストーリーを組み込んでいく予定です。バッドエンド好きな方もハッピーエンド好きな方も楽しんでいってください!

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