アマミヤ君のこと

光河克実

第1話 同じクラス

 今日は気分が良かったので、僕は久しぶりにショッピングモールに行くことしました。そこにはペットショップがあり、可愛い子犬や子猫を見るのが楽しみでした。

 そこへ行く途中、知った顔のおじさんを見かけました。小学校の時の先生でしだ。小学校を卒業してから七年は経ちます。

「先生!」僕が思い切って声をかけると先生ははじめ、僕が誰か分からなかったようでした。それから急にハッとしたようでした。

「先生。お久しぶりです。お元気ですか?」

「おお、君か。もう良いんだね?」

「ええ。今は元気です。」

「そう。良かった。ご両親も元気?」

「ええ。でも今は僕、一人暮らしなのでいつも一緒にはいないんですよ。」

「そう。あの時、君の代わりにお母さんに卒業証書をお渡ししたっけね。」

僕は卒業の時、ある事件に巻きこまれて病院に入院し卒業式にも出られていない。 僕はあの事件と、友達だったアマミヤ君とタナカ君の事を思い出さずにはいられませんでした。


 僕は小学六先生の春、今住んでいるこの町に引っ越してきて、その小学校に転校してきました。そしてタナカ君とアマミヤ君と同じクラスになりました。タナカ君は元気で活発、運動も勉強も得意でクラスの人気者。とても目立つ存在でした。カッコよくてイケメンで女子の憧れの存在でした。何より面倒見が良く、転校して友だちのいない僕をすぐに自分が中心のグループに入れてくれたのです。ですから僕もタナカ君が大好きになりました。一方、アマミヤ君はおとなしい子で、いつも休み時間はポツンとひとり、自分の席に座っていました。勉強も運動もあまり得意ではなかったと思います。しかし、僕はなぜか心のどこかでアマミヤ君が気になっていました。僕はたまたま運よくタナカ君の友だちになり、そのグループにいる事が出来ましたが、本当は内気な少年で、どちらかというと自分はアマミヤ君に似たタイプだと感じていたのです。


 六月後半になり僕はタナカ君、アマミヤ君と同じ班になりました。班長は自然とタナカ君に決まりました。

 学習では班単位で調べたことを発表するなど、班活動が重要だったりしたものです。その際、手際よく物事をすすめるタナカ君はマイペースでモタモタしているアマミヤ君に対し、イライラする事が多くなってきたようでした。そのせいでしょう。アマミヤ君をいじったりからかったりするようになりました。特に給食の時間、アマミヤ君は口元をいつも左手でかくすようにしてごはんを食べるクセがあり、そのまねをしてからかいました。アマミヤ君はまねされて恥ずかしそうでした。

 そんな頃、タナカ君から僕はある相談事を聞かされました。プールの水泳の授業が始まりタナカ君が着替えをしている時、アマミヤ君がその裸の姿をじっと見ていたというのです。それから水泳の時もずっとアマミヤ君の視線を感じたというのです。

「僕は思い過ごしじゃないの?」と言いましたが内心、アマミヤ君もタナカ君に憧れているのかなと思いました。しかしタナカ君は気持ち悪がっていました。

 それ以来、タナカ君はアマミヤ君に今まで以上につらく当たりました。単なるいじりというよりいじめでした。他のタナカ君の友達グループも面白がってそれにならいました。そしていつしかアマミヤ君は毎日、彼らにいじめられる対象になってしまったのです。僕はアマミヤ君に同情し、いじめに加わることはしませんでしたが、助けることもできませんでした。タナカくんとも相変わらず仲が良かったですし、憧れの存在でした。だからグループから外されることが怖かったのです。

 

 

                                  続く

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