未完
夕雨 夏杞
未完
暗い暗い夜だった。
吸い込まれそうな真っ黒な空。
少女はお気に入りのリュックを背負って駅のホームに立っていた。電車の音が近づいてきた。
少女は一歩一歩と足を進めていく。
落ちるか落ちないかのギリギリのラインに立った。
━━彼女は、遠くを見つめていた。━━━
1
「君、危ないから後ろへ下がりなさい。」
駅員にそう言われた私は、後ろへ下がった。
電車が止まる。私は躊躇なく電車へ乗り、近くの椅子に座ることにした。
どこに行くかは決まっていなかった。どこか、どこか遠くへ、行かなければならない。
だって私は、"罪人"だから。
私はふと目を閉じた。色々なものがぐるぐると頭を駆け巡るが、今はただ休みたかった。
そのまま私は深い眠りについた。
数時間たったか、数十時間たったのか、とにかく長い間眠っていた気がする。
駅員に起こされるまで、ずっと眠ってしまっていた。どうやらここは、終点らしい。
電車から降りると、私が住んでいる田舎では有り得ない光景が目に入った。
夜なのに、周りはにぎやかで明かりがたくさん。都会というのに気がついたのはこの為である。
「ふぅ…」
何かを吐き出そうとするが、言葉にならずにため息となって出ていく。
私はとぼとぼと下を向いて歩き始めた。
下を向いて歩くクセは昔からだ。人見知りで、人間不信で、つい睨みつけてしまう。
だから、人に好かれはしなかった。
でも、私の一番の理解者である家族がいれば、そんなことはどうでもよかった。
どうでもよかった、はずだった。
未完 夕雨 夏杞 @yuusame_natuki
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