こうして女戦士はアヘ顔ダブルピースを回避した。

タヌキング

女戦士と占い師

「ようやく着いた。」


私こと女戦士エリスは、田舎の村を出て三日目でようやく【クッコロ】の町に着いた。

最初は一人旅で苦難の道になるかと思ったが、道中モンスター達も比較的に楽に倒せたし、やはり厳しい修行に耐えただけあり、私は結構強い女戦士なのだろう。

【クッコロ】は商業で栄えた町ということもあり、出店屋や市場などが多くあり、非常に賑わっている。そこで困るのが私を見る人々の視線である、私は動きやすい赤のビキニアーマーを装備しており、肌の露出が大変多い。

その上、客観的に見ても発育も良くスタイルも良い、俗に言うボン・キュッ・ボンなので、通行人の目も私に釘付けになるのだろう。特に男なんか舐め回すように私を見てくるので本当に気持ち悪い。

ふん、せいぜい今宵は私をオカズするが良いわ!!

そんな風に開き直って歩いていると、一人の老婆に呼び止められた。


「お待ちなさい、そこの赤いビキニアーマーの女戦士さん。」


「ん?私のことか?」


周囲に赤いビキニアーマーの女なんか私しか居ない。

老婆の出で立ちは頭には黒い頭巾、体には黒いローブを着た、腰の曲がった右手に杖を持ったヨボヨボシワクチャな老婆であり、見るからに怪しい人物である、


「そうです、そこの人。何やらアナタに不穏なことが起こる未来が見えます。今から私の占いの館に来てくだされ。占ってしんぜよう。」


「あっ、そういうのいい。じゃあな。」


こんな怪しい老婆に付いて行くなんて、何されるか分かったもんじゃない。私は早々にその場を立ち去ろうとした。


「待ちなされ。無料で占ってあげるから。悪いことは言わないから着いて来なさい。」


「タダ?ねぇタダなの?」


「そう言っておる。」


タダか、実は私はタダという言葉に弱い。それに高校の頃は占いに興味はあるが、体育会系のサバサバ系女子で通っていたから、キャラ的に占いなんて興味ないフリをしていたクチである。良い機会だから占ってもらうのも良いかもしれない。なにせタダだし♪


「オ、オホン、し、仕方ないな。そこまで言うなら付いて行ってやろう。」


「イッヒヒ♪そうこなくては♪」


・・・イッヒヒ♪って大丈夫かなぁ?


人気のない迷路のような路地裏の入り組んだ所に【占いの館】と書かれた看板の立て掛けてある小さな建物があって、私は老婆に手招きされて、その建物に入っていった。

建物に入るなり小さな暗い部屋があり、そこにはテーブルを挟んで背もたれ付きの椅子があり、テーブルには占いの館らしく丸い水晶玉が置かれていた。

ぶっちゃけ胡散臭い。


「そこの椅子に腰掛けて下され。」


「分かった、だが変なことしようとしたら即刻帰らせてもらう。」


「イヒヒ♪分かっていますよ。」


私が出入り口側の椅子に座り、老婆が向かいの椅子に座った。そうして老婆が水晶玉に両手をかざし、いよいよ占いが開始された。


「むむむっ・・・」


なんだか老婆は忙しなくかざした両手を動かして水晶玉を覗き込んでいるが、やればやるほど胡散臭い。もう帰ろうかな?


「アナタの未来が見えました。」


カッと目を見開いて、老婆はそんなことを言ったが、本当だろうか?とりあえず聞いてみるか。


「ほぅ、どんな未来だ?」


私のこの問いに対して、老婆は淡々と私の未来を語って聞かせた。


「【ゴブリンの巣】にて、ゴブリン達に拘束された後、凌辱され、命乞いして、最終的には性奴隷にされてアヘ顔ダブルピースですな。」


・・・ん?なんだって?


「そ、そんなわけないだろ?デタラメ言うな。」


「いやデタラメじゃないって、完全にアヘ顔ダブルピース極めてるから、疑うなら水晶玉見てみ。」


何だこの老婆?急にフランクな話し方になったぞ?

水晶玉にそんな姿が映ってるわけ・・・。


「きゃあああああ!!」


水晶玉を覗き込んだ私は、思わず女の子みたいな悲鳴を上げてしまった。

何故なら水晶玉には素っ裸の私が、ゴブリン達に性的な乱暴されながらアヘ顔ダブルピース極めている姿が映っていたからである。


「ほら、これ完オチしてるから。薄い本も熱くなる案件だから。」


「ふ、ふざけんな!!このババァ!!この場で叩き斬ってやる!!」


私は咄嗟に剣を抜こうとしたが、老婆は慌てた様子もなく冷静に私を諭した。


「待て待て、そんなに取り乱してるってことは、アンタにも心当たりがあるんだろ?さしずめ、本当に【ゴブリンの巣】にて行ってゴブリン退治をするつもりだったとか。」


「くっ!!」


悔しいがその通りである。ここいらには有名な【ゴブリンの巣】があり、そこのゴブリン共を皆殺しにして名を上げようと予定していた。

だがゴブリン相手に私が遅れを取るワケがない。あんな弱いモンスターごときに。


「ゴブリン相手に遅れを取るワケがない。そんな顔してるねぇ。」


「はっ!!・・・な、何だお前?心でも読めるのか?」


「顔見てれば分かるんだよ。田舎者。いいかい?ゴブリンってのは徒党を組むとヤバいんだよ。20匹も居れば上級のモンスターすら倒すんだよ。そんで【ゴブリンの巣】には少なくとも100匹は居るからねぇ。アンタ程度の女戦士なら10秒も持たずにアーマーブレイクさ。そんでゴブリンは性欲が強いからね。そりゃあもう大変な目に遭うよ。」


「そ、そうなのか?」


正直、体がブルっと震えた。完全にゴブリン舐めてたから危なかった。


「アンタ顔は良いし、気は強そうだし、黒髪ポニーテール、筋肉質かつスタイルのいい体、ピチピチの褐色の肌、おまけにビキニアーマーだろ?犯されに行ってるようなもんだよ。悪いことは言わないから旅するのはやめて田舎に帰りな。」


「な、なんだと!?」


【ゴブリンの巣】に行くなと言うのは分かるが、旅をやめろというのは何事か。


「【ゴブリンの巣】に行かないにしても、アンタはゆくゆくは魔王討伐しに行くつもりだろ?」


「そ、そりゃ、冒険者って言ったら、そうなるだろ。」


「それが不味いよ。魔王城に行く最短ルートには【オークの森】があるだろ?そこアンタ通るつもりだろ?」


「なんでもお見通しかよ!!・・・そりゃ通るよ。」


「そこ通ったら100%アンタはオークに捕まり、通称【人間牧場】に連れて行かれ、調教されて、孕ませられて、搾乳されて、はいアヘ顔ダブルピース♪」


「た、楽しそうに言うな!!大体本当にそうなるとは・・・」


「はい、水晶玉見てみ。」


「えっ?・・・きゃああああ!!卑猥な乳牛のコスプレしてるぅううううう!!」


そこから私は何とかアヘ顔ダブルピースを回避しようと、空路、海路とルートを変え、仲間を増やしたりしたが、ことごとくアヘ顔ダブルピースコースだった。


「はぁはぁ・・・このルートならどうだ?」


「ふむ、これなら魔王城に辿り着ける。だがね、結局魔王が一番強いからね。はい、魔王の性玩具として一生を過ごす、ゲームオーバー、アヘ顔ダブルピース♪」


「・・・もう、悲鳴を上げるのも疲れた。」


水晶玉には魔王の前で、見慣れた私のアヘ顔ダブルピース姿。ここまで来ると諦めるしかない。


「グスッ・・・田舎に帰る。」


「それが良いよ。今日はウチに泊まってきな。んで、馬車で帰るんだよ。じゃあないと帰り道でアヘ顔ダブルピースになるから。行きでアヘ顔ダブルピースにならなかったのは運が良かっただけさ。」


「ま、マジかよ!!危ねぇ!!」


こうして私は女戦士をやめて田舎に帰ることに相成った。



〜三年後〜


私は【クッコロ】に住む占い師。今日も全く客が来なくて暇だ。

そういえば写真付きの葉書が届いていたのを思い出し、その葉書に目を通してみる。差出人はとある元女戦士からだった。


"占い師さんありがとうございます。おかげで幸せなピースをすることが出来ました。"


という一文だけ添えられて、写真には幸せそうな新郎新婦の結婚式の姿が映っており、新婦が新郎に左手で抱き着き、右手でピース、そしてニッコリ笑顔を決めていた。

アヘ顔ダブルピースが、ニッコリ片手ピースになったので、自然と私の顔も緩んじまったよ。





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こうして女戦士はアヘ顔ダブルピースを回避した。 タヌキング @kibamusi

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