第2話 ネオンは優しく儚げに光る
組から渚と母親に三百万円という小額な金が渡されてアニキの舎弟だった俺は破門にされたー。
組の内部にも派閥があってアニキは負けたのである。
渚と母親は高級マンションから三鷹の安アパートへ越した。母親はスーパーのパートに出て渚はウリするようになった。
俺は元々ゴキブリのような生き方をしているから適当にクスリを捌いたり箱探しをしたりプラプラ生きている。
半年後ー。
アニキを填めたであろう敵対派閥の高木が殺された。犯人はやはり女の殺し屋らしい。
高木を皮切りに別組織のトップや若手の幹部が数人消されていった。
俺は“女殺し屋”に興味が出始めた。どうせ大陸の人間だろう…いや、映画のニキータみたいな感じなのかも…と。
「鉄ちゃん!久しぶり!元気?」
「渚ちゃんかぁ久しぶりだな!俺は元気だよ。渚ちゃんは元気かい?」
「うん!元気だよ……」
「嘘つけ!元気ないだろ?なんかあったか?」
「……」
「今どこだ?」
「…新宿」
「近いな!直ぐ行くわ」
「ありがと」
俺は東口まで西武新宿から走った。
渚は小さなトンネルの入口に小さく蹲っていた。
渚は息を切らした俺を見上げて泣き出した。
俺は軽く抱き締めて頭を撫でた。
「辛いよな…生きるってさ」
「…」
「泣け泣け無理するな」
「…」
「飯食べたか?」
「なんか…食べさして」
「何が良い?」
「吉野家……」
「牛丼かい!」
それからしばらく渚は泣き続けた。
渚の母親は男を作って出て行ってしまった。一人になった渚は身体を売りながら生活しているらしい。同年代は相変わらずキャッキャッして遊んでいるのに自分は違くて悔しくて寂しくて辛くなって、頼れるのが俺しか居ないのであった。俺もガキの頃から孤独だから何となく渚の気持は解る気がする。
「渚の人生を狂わした奴を殺すか?」
「え?」
「アニキを殺した奴がまだ東京にいるはずなんだよ」
「でも、鉄ちゃん弱そう…」
「バカヤロウ!以外とタフだぞ!」
「やろう!どうなってもいいし!」
「よし!情報を集めるからよ」
「アタシは何をする?」
「渚は中坊の時に弓道やってただろ?」
「うん!」
「また練習しておいてくれ」
「わかった!」
俺の人生なんて無意味で目的も無いが渚の人生は大事な宝物なのだー。
アニキが姐さんと渚を連れて豊島園で楽しそうに遊んでいる光景が俺に焼き付いている。それが一瞬で消えてネオンを目立たせるための影に消されてしまった。いつ死ぬか解らない世界だからアニキの死は問題ないが渚の人生は明るく照らさなければならない。
俺は横浜のチンの所へ向かったー。
つづく
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