生命を平等に

藍条森也

死んで償え

 その日、地球上のあらゆる国家から刑法の年齢制限が撤廃された。

 これによって年齢に関わらず殺人犯を死刑にすることが可能となった。

 「これで、被害者が報われる!」

 世界中がその歓喜に沸き立った。


 時を同じくして、遙か銀河の彼方では、高度な知性体によって作られる評議会において、ある採決が行われようとしていた。

 「ご覧の通り、地球人類は『人を殺したら死んで償え!』と主張しています。しかし、そう主張する当人たちはのうのうと生きている。我々に対し、

 『お前たちは人間ではない!』

 と、主張しているのです。

 生命の平等を守るため『我々を殺している罪』で、地球人類そのものを死刑とするよう要求します」

 「相手の事情を考慮する気はないのですね?」

 「ありません。我々を殺している相手のことを思いやってやったあげくに、

 『殺した側の気持ちを理解してやらなければならないなんで信じられない偽善者』

 『被害者より加害者を大切にする人でなし』

 などと、非難されたのでは割にあいません。ですから、我々を殺している側の事情を考慮することは一切、やめとしました」

 「わかりました。では、裁決に移ります」

 票が集計され、すぐに結果が出た。

 「当評議会は『選択的中絶』によって殺された無数の地球人の魂の訴えを認め、地球人類そのものを死刑とすることを満場一致で可決いたしました」

                  完

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