第98話 不穏な気配がするんだ①

 ミドリちゃんといっしょにルーの家に戻ると、家の前にルーヴ・ルプスと人狼の里の重鎮たちが集まって難しい顔をしていた。


「父上?」

「ルーヴ・ルプス・ジュニア」

「どうかしたのですか?」

「大事な話がある」

 ルーヴ・ルプスは眉間に皺を寄せて、重々しい口調で言い、それから、ミドリちゃんに視線を向け、「そこのドラゴンも、もしかして同じ話を持って来たのではないかな?」と言った。

 ミドリちゃんが人狼のみんなに話したい、大事なことと同じ?

 楓はミドリちゃんを振り返った。ミドリちゃんは真面目な顔で頷いた。


「さて。家では手ぜまだから、中央広場に行こうか」

 ルーヴ・ルプスがミドリちゃんを見ながらそう言ったので、人狼の里の重鎮たちといっしょに、楓、ルーそれからミドリちゃんは中央広場に向かったのである。


「カエデ、眠くない?」

 ルーが心配して言うと、楓は顔を真っ赤にして言った。

「あたし、大人だもん!」

『カエデちゃん、子どもだから』

 ミドリちゃんはくすくす笑った。

「ルスラたちはもう眠そうだったからさ」

「だから、子どもじゃないってば!」

 ルーは苦笑して楓の頭をぐしゃぐしゃっとした。



 中央広場に着いた。

 広場には灯りがともされていて、炎があたたかく辺りを照らしていた。

 円形の広場の中央にミドリちゃんが座り、その周りに人狼たちが集まった。みな、真剣な目をしていた。

「ドラゴンよ。まずは我々が入手した情報から話していいかな?」

 ルーヴ・ルプスが言うと、ミドリちゃんは黙って頷いた。


「カエデ殿がいるから、まずはアルニタス大陸について話そうか――」

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