第3章 夏休みは異世界で! ――織子の夏の過ごし方
1.日本に「ただいま!」、異世界にも「ただいま!」
第57話 久しぶりの日本! まずは彩香のうち①
「
「彩香ちゃん!」
突然リビングに現れた僕たちに、彩香のお母さんの
彩香は香織さんと織子を見ると、嬉しそうに言った。
「ママ! 織子! ――ただいま!」
彩香と、香織さんと織子ちゃんは抱き合った。いや、彩香は
「……この子は?」
「楓って言うの。あたしと
「かえでです! よんさいです!」
楓はにっこりと笑って言った。かわいいんだ、これが!
「彩香、そっくり……!」
香織さんはそう言って、彩香をじっと見て、それから僕のこともじっと見た。
「……あなたたち、今、何歳なの? 十六、じゃないわよね? 今までどこにいたの? 心配していたのよ」
彩香が「あのね」と話し始めようとしたとき、香織さんが言った。
「あ、その前に、靴! 靴脱いで! それから手を洗って、お茶にしましょう」
「お茶にしましょう」
織子ちゃんも真似して言う。
僕たちはふわっとあたたかい気持ちになって、まず靴を玄関に置きに行った。
リビングに戻ると、紅茶とクッキーが用意されていた。
「クッキー!」
楓は満面の笑みを浮かべて、席についた。そして言った。
「あのね、いつもね、パパがつくってくれるんだよ」
「彩香ちゃん、お料理苦手だもんね! 弘樹くんが作っているんだね。うふふ。あのね、このクッキーはね、織子が作ったんだよ」
織子ちゃんはえへんと胸を張って言った。そう言えば、織子ちゃん、お料理上手だったな、と思い出す。確か香織さんも料理が苦手で、彩香のうちのごはんは彩香のお父さんの
「楓ちゃんは牛乳かな? ……牛乳って知ってる?」
香織さんは僕と彩香に紅茶の入ったカップを差し出しつつ、楓の前には牛乳の入ったグラスを置いた。
「ぎゅうにゅう、すき!」と楓が言うと、織子ちゃんは「おいしいよね!」と言ってにっこり笑った。二人はもうなんとなく仲良くなったようだ。
楓は彩香にそっくりだ。そして織子ちゃんも彩香に似ている。
……なんか、彩香が三人になったみたい。
「楓は四歳、織子は七歳。だから、叔母と姪っていうより、お姉さんと妹って感じよね」
彩香はにこにこしながら言った。
「織子、楓ちゃんのお姉さん! あたし、お姉さんになりたかったの!」
「かえではね、おねえさんがほしかったの。おりこちゃんがかえでのおねえさんなの、うれしい!」
織子ちゃんと楓は、顔を見合わせて、えへへ、と笑った。
「さてと。織子、楓ちゃんとお部屋で遊んでおいで」と香織さんが言うと、織子ちゃんは満面の笑みで「うん!」と言い、楓と手をつないで、「こっちだよ」とお姉さんらしく言いながら、自分の部屋へ行った。
「じゃ、詳しく話してくれる?」
香織さんは紅茶のおかわりを注ぎながら、にっこりとして言った。
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