異世界でドラゴンをかう、ペガサスもかう、えーと次は何だっけ?
西しまこ
第1章 僕は彩香に逆らえない
1.冒険のはじまり
第1話 はじまりの草原①
僕は、異世界に転移してしまった。
しかもデート中、彼女の
僕たちは水族館にいたはずだった。しかし、薄暗い屋内から屋外施設に出ようとしたとき、眩しい光に照らされ――気づいたら、地平線の見えるような広い草原にいたのだ。
彩香が繋いでいた手をぎゅっと強く握ってきたので、僕も強く握り返した。
「彩香、ここ、どこだろう?」
どこまでも広がる緑の草原。右手には遙か遠方に山が見え、左手には森が広がっていた。水族館は影も形もない。そもそも、絶対に日本じゃない。
「……異世界ってやつじゃない? 流行りの」
「うん……どうしよう?」
僕が途方に暮れていると、彩香は実に明るい声で言った。
「冒険じゃない?」
「は?」
「冒険しなきゃ! 異世界だし。それにきっと、スキルとかがあるよ! ステータスオープン!」
え? 彩香、何言ってんの?
と思ったが、彩香は空中に出た画面を見て、はしゃいでいる。
「きゃー、あたし、白魔導士だって。よくない? なんか、けっこう強い気がするよ。
仕方がないので、「ステータスオープン」と言う。……恥ずかしい。
「見せて見せてー すごっ! 戦士で素早さと攻撃が九十九だって。あたしはね、幸運が九十九だったよ! やばっ!」
九十九がマックスかどうか分からないけれど、ともかく高い数値なら何よりだ。しかし、彩香の幸運が九十九? 異世界に飛ばされて?
僕は頭を抱えた。
「ねえねえ、弘樹くん、人がいるところへ行かない?」
「人? 何にもないけど、ここ」
「ほら、見て、あそこ。川が流れているでしょう?」
彩香が指さす方を見ると、確かに水の流れが見えた。「うん」
「あっちの山の方から流れて、森に続いているじゃない? だからね、川沿いに森を抜けて行ったらいいんだと思うの。変な話、水さえあれば生き延びられるし」と言って彩香は「じゃ、行こ!」とにっこり笑った。
僕はつられて笑顔になりながら、「うん!」と言って、二人で川の方へ歩いて行った。
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