第15話 魔王?

「フッ、望むところだ! 魔剣騎士め!」


俺はベッドの上に立って敵に言い放った。


「あなたも魔剣騎士ね!」

「そ、そうだよ!」

「私はオルセイン。あなたは?」

「え、俺はハヤトだけど……」

「素敵な名前ね! 死んで! そしてその魔剣をちょうだい!」


強気になったのも束の間、俺は動揺している。

いきなり窓から侵入されて名前を褒められ、殺意を向けられたのだ。

ちょっとまた話を聞かない系の人かもしれない。


「あなたが魔剣を手にしていることは知っているわ! 今日、騒ぎを起こしていたからね!」


心当たりがあり過ぎる。


「さあ! 大人しくその魔剣を渡しなさい! 【破壊】スキルを使っても無駄よ! 私が使っているのは【破滅】なんだから! しかも、そんな折れている魔剣じゃどうにもならないわ! 私の前じゃ無意味な魔剣……いや、魔短剣だわ!」

『主! 彼女の言っていることは本当です!』

「ああ、お前は魔短剣だよ」

『そっちじゃないです! 主! そろそろ私も怒りますよ?』

「ごめん! あっちのほうが強いんだな?」

『そういうことです』

「魔短剣と相談しているのかしら?」

「そうだよ! 俺のグリムは渡せない」

「いいえ、絶対に奪ってみせる! だって、それで私の仕事がやりやすくなるもの! 魔王から逃れるために!」


え、魔王?

死んだんじゃ……!?


「魔王って死んだんじゃ……? なぁ、グリムは魔王の遺品だよな?」

『主! 敵の言うことを聞いてはなりません! 攻撃がきますよ!』

「えっ!? グリム!?」


なんかグリムが怪しい雰囲気を出しているぞ。

何か……俺に秘密にしている……!?


「ゴチャゴチャとうるさいわね! 問答無用だわ! いくわよ!」


敵の魔剣騎士は剣を抜いて構えた。


「くっ……やるしかないか……!」


俺は覚悟を決めて、右手に握ったグリムを構える。


「行くぞぉっーーーーー!!! 【破壊】スキルで勝てないのであれば!!」


俺は思いっきりジャンプして、敵に向かって斬りかかった。

【破滅】スキルとやらを放たれる前に倒してしまおう。

しかし、俺の攻撃は簡単に避けられてしまった……!!


「遅い! 遅すぎるわ! そんなんじゃ私の【破滅】スキルを出すまでもないわよ!」

「うぐぅ……! クソォッ!!」


俺は何度も剣を振ったが、ことごとく避けられてしまった。


「どうしたの? どうしたの? どうしたの? ねぇ……どうしたの?」


こ、この子……やっぱり人の話を聞かない系だ!!


「どうしたの? それが本気なの? 本当に? 嘘でしょ?」


いや、性格が悪いんだけか!?

ムカつくなぁ……。

待て……冷静になれ……熱くなるな!

このままだと負ける!!

俺は勝って、自由に生きるんだ!


「グリム! 【解放】! ……からの【破壊】だ!!」

『主! それは! 解放しないでください!また頭痛が来ますよ!?』

「そ、そうだった……!! ああああああっ!? 頭いてぇ!! 頭が痛いよおっ!!」

『主! バカあああぁっーー!!』


---


俺の脳裏にまたあの光景が浮かぶ。

女性……魔王は女性……。

血だらけの俺。


「そう、私は魔王だ」

「ま、魔王!?」

「思い出してしまったようだな……」

「お前が魔王なのか!?」

「思い出していないようだな……」

「俺は何も知らない!」

「思い出していないなら構わない」

「俺は何も知らないんだ!」

「錯乱しているようだな……」

「俺は……俺は……何者なんだ!?」

「こんなに思い出さないなんて、お前は都合の良い駒だ……」

「駒!? 俺は駒なのか!? 俺は何も思い出せない!!」

「ちょっとうるさいな……。早く戦え、このままだと死ぬぞ。私からしたら、どっちが勝っても良いんだ……」

「なにぃ!? なんだその立場は!? どうやって勝つんだ!?」

「え……自分で考えろよ……」

「俺とアイツ、どっちが勝ってもいいなら教えてくれてもいいだろ!?」

「押しが強い男だな。……【破滅】に勝つには【絶望】のスキルしかない」

「ぜ、絶望……!? 絶望のスキルだな!!」


---


『主! 主! 大丈夫ですか!? 敵の攻撃が来ますよ! 【破滅】が来ます!』

「グリム! 【絶望】スキルを使え!」

『主!? なぜそのスキル名を!? そ、それは危険過ぎます!』

「自由気ままなハッピーライフを送るには、やるしかないだろおっ!! 【絶望】!!」

『主ーーーー!! やめてーーーー!!』

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