昨晩は味噌汁を飲まなかった
荼八
昨晩は味噌汁を飲まなかった
ぱちぱちと弾ける音は
背の低い建物の中に響き
風は香りを運ぶ
使い古しの紅白帽に似た梅の色は
何か仕向けられた様に懐かしい
山とも丘とも言えぬ 展望台
緑の隙間から見える物は
寂れた街と古ぼけた広告
膨らんだ空気が漏れ出して
均衡は微かに乱れて匂い立つ
何処か歩きに行こうとすればする程に
手を惹く 行かないで そう呟いたのは
大人になった私か
子供の頃の私だったか はたまた
夢の話は詰まらないから
しない様にしようとか
理屈めいた言葉は 自分さえも縛るからとか
それさえも 置き去りにしたかった
それが出来るのならば
幸せだと想うようになった
孤独も永遠も愛も 何も無い世界に
ポツネンと佇むのが 私にとっての一番の幸せだった
誰かの為とか 自分の為とか いらない
過去の自分は語る 本当の幸せを 過去の自分が見せる 本当の幸せを
だが 過去に戻ろうとは思わない 過去は過去であり経験だから
あの時の香りも風景も 風化する かつての幸せはいずれ消える
苦しみも悲しみも同じ様に 消えてくれれば好いのに
何時もなら眠るのが 私の文章の締めなのだが
今日ばかりは 今後もそうなると嬉しいかも知れない
そして なるべくならば 隣にいる人にも同じ言葉をかけたい
昨晩は味噌汁を飲まなかった 荼八 @toya_jugo
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