彼は語ります。横座りする彼女の姿が、あまりにも艶やかで 

 ミッチとカンナが帰っていった。ママが送ってくれるんだ。


「じゃあ,またね」


 2人を乗せた車が見えなくなるまで、手を振っていました。

そうして、駐車場から庭にあるデッキまで歩いていく。今日一日中はしゃいでいた体の火照りを冷やすのにはちょうどいいかな。

 お庭のデッキに向かっていると,そこにあるテラスボックスに一孝さんが座っている。


 みんなは、もう、家の中に入っている様。燃え尽きた花火も,それを入れていたバケツもありません。片付けさえ、終わっていました。


「美鳥」


 と,私は呼ばれた。みると彼はボックスの自分が座っているところの側をボンボンと叩いている。お隣に座ってと言うことかしら。


「お邪魔しますね」


 宴が終わったと言うのに、私の気分は高揚している。なぜって一孝さんと2人きりなんですよ。朝からみんなといて楽しかったけど、どちらかと言えば、彼と2人でいたかった。そうすれば,もっと楽しめたんじゃないかって思ってしまう。


「一孝さん、今日一日中,楽しめましたか? 私は楽しめましたよ」

「俺も、楽しんだよ」


 彼は笑って答えてくれた。私も笑顔を返してあげる。途端に彼の頬が赤くなっていくの。

「本当に美鳥の笑顔の威力は大きいなあ。それを見るととドキドキが止まらなくなるよ」

「そうなんですか? もしそうなら、もっと,もっと嬉しいですよ」

「またぁ。あまりドキドキさせてくれるな。ほらっ触って……」


 彼は私の手を取ると自分の胸に当てた。


「あっ」

「ドキドキしているのがわかるか?」


 私は,それには答えられない。だって彼が私の手を引いたせいで、一孝さんの胸に寄りかかる様な態勢になってしまった。おかげで体が接近して、すぐ間近に一孝さんを感じるの。息するのがわかるの。

 私までドキドキしてしまいます。頬も熱くなってきました。耳も赤くなっているに違いありません。

 それに気づいたのでしょう。彼は手を離してしまいます。


「ごめん、強引すぎたね」


 私と彼が離れてしまう。なんか残念でしょうがないです。

 だから、私は、顔を上げて彼を仰ぎ見るの。そのまま、彼の目をじっと見るの。彼も私の目をじっとみてくれた。


 暫く、時が止まった。


 どれだけの時間,見つめあっていたのだろう。一瞬でもない。永遠ともいえる時間じゃないかしら。


 そのうちに彼が視線を外す。もう、なんで。


「ここで待ってたのって美鳥と花火の続きをやろうと思ってね」


 うふ、彼の顔が真っ赤になってる。照れ隠しで話してきているのね。


「残ってるのはないんじゃないの」


 美華姉が、たくさん手持ち花火をお土産に持ってきた。でも、つい面白くて、みんなで火をつけまくって楽しんで、全部なくなったと思ったのに、


「線香花火が、まだ残っていたんだよ」


 彼の手に線香花火が握られていた。鮮やかな色使いの和紙で細く撚り合わせた紙撚りが数本あります。


「いいですね。線香花火は好きですよ」

「俺も、久しぶりだったし、美鳥と楽しみたかったんだよ」

「嬉しいですね。じゃあ,早速」


 彼の手から、紙縒りを1本取り上げて、彼との間にある火のついた蝋燭にかざす。

 紙縒りの先に火がつくと燃えて赤い球ができる、やがてパチパチと火花が出て四方八方へ広がり、勢いが出ます。で、だんだんと勢いも衰えて、チロチロとしたものになって、消えてしまう。

 じっとしていないと火玉が途中で落ちてしまうから,我慢我慢。


「美鳥,上手にできるじゃないか。では俺も」


 褒めてくれました。えっへん。


 一孝さんが、紙縒りに火をつけようとするけど、


「どっちか長く火花を出せるか競走しません?」

「いいねえ。やろう。やろう」


 一孝さんの手からもう一本,線香花火を撮ると、2人揃って蝋燭に翳して火を付けた。

並んだ2本の線香花火花火から火花が勢いよくで出出した。その光の当たるところが揺らめく。その中で火花がまるで踊っている様に見えるの。


 それをじっと見つめていると、1日の楽しかったことを思い出してしまう。


「ねぇ、お兄ぃ。今日はお兄ぃといられて楽しかったよ」


 呟いて気づいた。


  あぁー


 お兄ぃっ言ってしまった。一孝さんって呼んでたのに、

 やっぱり、私の中ではお兄ぃはお兄ぃなんだね。すごく頼りになるの、私の全部を預けてしまいたくなるぐらい、


 だから、今日は一日中、一緒にいて、歩いて、泳いで、助けてもらって、抱っこもしてもらって、へへへ。おんぶまでしてくれた。


 嬉しい,嬉しい、嬉しい。


 お兄ぃなら、あなたなら、もう、これならっいいかな。


「お兄、あなたが欲しい。私の全てをもらって」


 思わず口に出してしまった。あなたへの想いが溢れたんだね。言って,すぐに顔がほてってしまう。


 私は何を口走っているの?


    でも、でも、でも


心に秘めていることなんだもん。


 すると、あの人が体を近づけて寄り添ってくれた。そして私の手に彼の手が重なった。私の頬に彼の唇が寄せられる。そして、


「俺も同じだよ」


 頬に ♡


 私は肩をすくめてしまう。けど、


    嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、


 嬉しくて,

たまらなくなって、思わず、


「おにぃのヴァカ」


 思わず反対の言葉を口にしてしまう。


 私もバカだ。


 彼が笑いながら、私を見る。

私も見返してあげる。


お互いの顔が近づいて、



powa powa




お兄が手を重ねてくれた。



お兄ぃが指を絡めてくる。



お兄ぃ,握ってもらえますか? 強く,強く


au








私の目尻から涙が一筋










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