第136話 パニック!!

 見てて面白いぐらい、大きく手を振ってスタスタと美鳥は流れるプールエリアに向かっていく。途中、階段を下り一階へ。

 自分の姿のシェイプアップのためとは思うのだけど、その執念には恐れ入る。女の子って、そんなにこだわるんだね。苦笑するしかないよ。

 流れるプールへの入り口に到着した。美鳥は振り返り、


「先に入りますね」


 と言って半円形になっている階段を降りようとする。


「ん?」


 突然、美鳥が動かなくなった、水面に片足を入れた状態でフリーズしてる。そのうちに体から力が抜けて崩れるように水面にしゃがみ込んでしまう。


「おい!」


 そのまま横に倒れていってしまった。慌ててダッシュして膝の下と背中に手を回して抱き上げた。


「美鳥、おい美鳥」


 耳元で喋りかけても反応がない。そのまま振り返り踵を返して、スタッフを探す。近くにウォータースライダーの着水プールもあり監視の為のスタッフを見つけた。美鳥を抱いたまま近づいて、


「すいません」


 と声をかける。もちろん聞く為だ。行き先はもちろん、


「連れが気を失ったみたいなんで、どこに連れて行けば良いですか?」


 俺と俺に抱えられている美鳥を交互にスタッフが見て、


「わかった。連絡を取るから、その娘を横にして寝かせてやりなさい」


 そういう指示をしてきた。でも、


「それじゃあ、間に合わないかもしれない。救護室は、どこですか?」

「君,これは私たちのやることだから、指示に従って!」


 俺も、美鳥があまりにも急に倒れたんで慌てていたんだろう。


「いいから教えてください」

「いい加減に…」


「言えっていってんだろ』


 俺も痺れ切らして言葉を荒げてしまう。


「き…み…」


 すると、側から


「どうしたんですか? 風見さん」


 どこか、ポアンとした感じで呼ばれてしまう。


「あぁ、」

「みゃ」


 思わず、声の主をガン見してしまう。


「あれっカンナさん」

「はひぃ」


 思いっきり怖がらせてしまった。

すぐさま、平身低頭謝りました。


「ごめん、ごめんなさい」

「グスン、どうしたんですか? 風見さんらしくないかな。大声あげて」

「そうそう」


 ミッチさんも顔を出してきた。


「ウォータースライダーを滑り降りたら、なんか風見さんが慌ててるのが見えたんです」

「何かと思って来てみたんですよ。グスン」


 本当にカンナさんにはすまないことしてしまった。言い逃れもできないぐらい酷いことしてしまった。困った、どうしよう。

 ミッチさんが俺が抱えているものに気が付いて、


「抱えているのって、みっ美鳥!」

「ええって、美鳥ちゃん」


 俺の慌てふためいているのが2人にも伝染してしまったようだ。


「どうしたんですか?、生きてるの? 死んでるの?」

「いやぁ、私を置いていかないでよぉ。っと一緒にあそびたいのにー」


 俺の腕や美鳥の方なんか持ってグァングァン揺すってしまう。


「ちょ、ちょっと止め、止めてって」

「美鳥」「美鳥ちゃん」


 2人の慟哭が止まらない。


「やめえー! ハァ、ハァ、はぁ」

「「はひぃ」」


 大声をあげて2人を止めた。

そして側で置き去りにしていたスタッフから、


「いま、救護に連絡入れたから、待っててくれるかな」


 するとカンナさんか、


「私、知ってます。ビーチの壁側に案内があるの、見ました」

「偉い! 愛してるよカンナちゃん」


 俺は踵を返して走っていく。


「ハゥッ」


 後ろから艶っぽい声がしたけど気にしてられない。



 俺はダッシュでに上階にあるビーチに上がるための階段目指して登っていく。






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