第121話 予選
ビーチフラッグも予選の第一組が終わって決勝に行ける人が決まったみたい。
アナウンスで宣伝したせいか、ギャラリーも増えてきている。
私たちの周りは背の高い人たちが多くて前が見えづらいの。
「どうしよう。前が見えないよ。人ばかりなの」
「ねえ、美鳥。風見くんって何番目に出るのかな?」
「私も知らないのよ。売店行くって別れてから、お話ができていないの」
「とうしよう。足元でも這って行こうか?」
カンナは、言ってくれるのだけれど、ミッチが反対する。
「そんなことなんかしてると踏み潰されちゃうよ。カンナなんか、口から腑出して潰れたカエルみたいになるよ。いいの」
「そんなのはいや」
二人して、喧々轟々と言い合っていたんだけど、丁度、次の2組目が始まるということで、ギャラリーが入れ替わって行った。ゾロゾロと前にいた人たちが抜けたところで、ちゃっかり、見ることができるところを確保できた。
「よかったよ。場所が確保できて」
早速、ミッチは手差しをしてビーチフラッグのスタート位置を見てくれた。
「いないなぁこの組みでもないみたいだよ。風見くん」
「そうなんだ。ぎんねーんだあね」
早く、一孝さんの勇姿が見たいものです。
そしてスタート地点を望んでみる。フラッグを争う人たちが集まっていた。
パッと見て、10人ぐらいは見えたけど、倍ぐらいいそう。1番前に5人が並び出た。次に争う人たちだ。黒髪、茶髪、金色に染めている髪。肌をちょい焼け、褐色。あまり焼けていない人それぞれ。
その中に
あの時の彼奴がいた。見てしまった。黒髪をツーブロックショートにしている彼奴が、ラッシュガードも着ているから間違いない。
どうやら彼奴も参加するようね。言ってた彼女とは合流できたのかしら。
他の人に混じってわかった。彼は背も高いんだ。でもね。わたしの彼だって背丈はあるよ。
そうこうしていると。
ピッ
笛が短くなった。スタートだ。みんな腹ばいになっていく。
「では、ビーチフラッグ予選第2組オンユアマーク! レディ」
ホイッスルが鳴る。
早い、彼奴は起き上がって体を翻し、ピーチをかけていく。そんなに足を上げずにスムーズに砂浜を走っていく。
そんな彼奴を見てギャラリーの歓声も大きくなっていく。後は、頭を前に飛んで、手を伸ばしてフラッグを取った。歓声が上がる、そんな歓声の中で、
「………也ぁー」
女の子の声が聞こえた。ちょっと舌足らずに彼の名前を叫んでいるの。
気になった。だって、私の声にそっくりなんだもん。私の声は、ほんのちょっとだけど、低いんだ。そっちを見たけどギャラリーに紛れて、ほとんど見えなかった。ちらっと 人の影からローズカラーのオフスリーブがちらっと見えたかな。ミッチが見たっていう子かもしれない。もしかして彼奴の彼女なのかな。
そして、またギャラリーが入れ替わっていく。次の組みの人たちが現れる。
いた!
一也さんだ。私の彼氏だよぉ〜。
並んだ5人のうちでも、背は1番高いの。黒く短くしている髪もかっこいいの。肌はそんなに焼けてはいない。
そんな彼は、頭を左右に振って、何かを探しているふうに見えた。
もしかして私ぃ。
彼が私を探している。探してくれているのよ。
そう思ったら居ても立っても居られなくて、両手を挙げてパタパタと振った。
私を見つけて、私はここよ。更にピョンと跳ねた。
あれ、背中が見えた。反対を探してる。私はこっちですよお。
そうすると彼の首にピンクの筋が見えた。一瞬だけど私にはわかってしまう。彼の彼たる所以。見逃すもんですか。
を彼は、更に半回転をする。
私は、
「一孝さん」
って叫んでた。もちろん飛び跳ねて、手を振っている。
そうして、距離が離れているけど、彼の目がわかった。彼の目がこちらに向いているのわかった。視線があった。彼の口は綻んでいく。
やったあ。私を見つけてくれたぁ。
隣にいたカンナが
「美鳥、風見さん、こっち見てたよ」
「うん」
ミッチも
「美鳥を見つけてくれたんだ」
「うん」
キュン
幸せぇ
すると、
ピッ
ホイッスルが短くなった。彼の組みがスタートする、
「では、ビーチフラッグ予選第3組オンユアマーク! レディ」
ホイッスルがなった。砂埃がたちあがり、その中から、うつ伏せになっていた彼が起き上がり、こちらに向けて走ってくる。
「一孝さん。頑張れー」
私は大声で彼の名を叫ぶ。応援する。
彼が私の前を通過した。先頭を走ってる。そしてわたしの顔を見てニコってわらってくれた。
一瞬だけどわかってしまう。
キュン
そのまま通過して砂を掻き上げ、砂煙を残してフラッグに向かって一直線。足からスライディングしてフラッグを掴みました。
「美鳥、風見さんのところに行くよ」
ミッチがわたしの手を取り引っ張ってくれた。
「うん」
カンナも私の背を押してくれた。
うん私のために頑張ってくれている彼の下に向かったの。
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