第110話 二者二様

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

   ◇.  ◇    ◇   ◇


 ベッドに何枚か、服を置いて悩んでいる。


 今日は美鳥とプールに行く日なんだ。

 2人だけで行くっていうことなら、遠慮なしに、いつものラフな格好でいけば良いのだけれど……

 美鳥の中の良い、お友達2人とも一緒に行くということらしい。

 今日行く予定のアクアリゾート・グランラグーンのグループチケットが手に入ったということで、俺も人数合わせで行くことになったんだ。

 美鳥は、いつもの格好でも良いですよと言ってくれるけど、美鳥の親友の2人とも会うんだ。格好だけでも決めておかないと美鳥の顔を潰してしまいそう。

 そうだ、美鳥はどんな服を着てくるんだろう。聞くのも気恥ずかしいし、どうしよう。


「コトリ、美鳥はどんな服選んでるか判るかな」


 隣で俺のことを見ているコトリに聞いてみたけど、


「うーん、なんかモヤモヤしてぇ、わかんないや」


 コトリでもだめかぁ。感情の起伏で判るか持って、淡い、期待でした。

仕方ない、スマホを持ち出し、検索をかける。



  〇   ⚪︎   ⚪︎  ⚪︎   ⚪︎


   ◇.  ◇   ◇  ◇


 今日は一孝さんとプールに行きます。


 もちろん、ミッチとカンナの2人も一緒に。ミッチがグループチケットをゲットしたの。それでみんなで行くことになりました。

 こそ、一孝さんと行ってデートにしてあげる。

 待ち合わせは、ウチ、琴守家に相成りました。

 ミッチは、


「わたしんちだと、丁度駅との間にあるんだわ」


 カンナも、


「私は行き慣れてるから、美鳥の家で」


 全くなんなの?

 本当は、行きたくなかった。アクシデントとはいえ、彼に見せたくはなかったの。ミッチとカンナに請われて連絡とってみれば、二つ返事で行くことになりました。

 みんな私のこと、わかってくれない。涙が出そう。


 でもね、行くからには、見せてあげます女の本気。

 もう、着て行くものは、昨夜から考えに考えて悩み抜いて決めてある。一周回って、いつもと変わらない。


「ママ、これで良いと思う?」

「一孝くんとプールに行くのでしょう? あなたが選んだのなら、それで良いのよ。口なんて挟めないわ」


 あ〜あ、ママもあてにはできませんでした。

 そうこうしているとインターホンが来客を告げる。

 

   きたかな。


急いで自室から出て階段をおり、玄関を開ける。

 期待に胸が高鳴った。


「こんにちは、美鳥。きたよ」


 ミッチだった。肩がストンと落ちる。


「私もきたのだけれど」


 カンナもミッチの後ろにいました。


「………上がってくれる。待ってて」

「何よ、その気のない話し方。彼氏じゃないからって…ひどくない!」


 ミッチがツノ生やして抗議してくる。だって、だってだって。


「おーい」


 気落ちした私の耳が、微かに聞こえる彼の声を聞き取った。


「えっ一孝さん?」


 サンダルも履かずに玄関を出る。

いた。


 手を挙げて、にっこりと私を見てくれる。


「一孝さん!」


 彼がきた。来てくれた。

 そして出立を見て、目を見張った。


「ぺ、ペアルック! ほぅ、色違いだけど同じね」


 カンナが驚きの声をあげる。

 私は、ローズピンクの半袖ブラウスにオフホワイトのハーフパンツ。

 一孝さんがやはりオフホワイトのハーフパンツにターコイズの開襟シャツ。足下はスポーツサンダルを履いていた。同じに見える。嬉しいで胸いっぱいになりました。


 ペアルックなんて私たちって、もう繋がっているんだね。

ダメ、頬が綻んで緩んでくる、にやけてきちゃう。


 「ペアなんて、見せつけてくれるわね。美鳥」


 ミッチが、呆れたとばかり声を上げる。


「ふふ、」


 きっと、ドヤ顔になっていると思うの。そうなるのを隠すのに、急いで玄関を駆け上がって行く。


「バックを撮りに行くね。すぐ行こう」


 みんなに檄を飛ばす。


 さあ、プールだ。楽しみますか。HAVE FUNだよ。

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