第66話 バックステージミーティング

催しスペースをシアン、マゼンタは颯爽と歩いていく。会場の縁をぐるりと回ってシェインズのキッチンカーへと来てしまった。


「鼎、手伝いに来たわよ」


 シアンさんがキッチンカーの裏手に回って話している。中からオフホワイトのシャツに黒のエプロンにキャップをした女性が出てきた。


「えーと、どなた?」


 一応、来客なんでキャップを取りながら尋ねてきた。

明るい髪色のワンレンショートの髪が現れる。なかなか綺麗な人だ。

一緒に歩いてきたシェインズのオーナー守道さんが、


「おい、鼎。わからないか? 琴守さんだよ」

「えっ。琴守? 美桜?」


 鼎さんと呼ばれた女性はオーナーとシアンさんを交互に見てる。そのうちにキッチンカーを降りて、近づいてきた。


「えっー、美桜! ウソっー! こんな可愛いかったっけ? 美華ちゃんならわかるけど」


 シアンさんの眉が少し、動いた。


「マゼンタ、ライム。ちょっと、こっち来て」


 2人とも呼ばれてシアンさんの下にいく。


「鼎! よく見てね。じゃあいくね。シアン」


 シアンさんが姿勢を正し、手を上に伸ばして、声を上げる。


「いきなり! マゼンタ」


 マゼンタも慌てているがポーズを決めていく。


「ええっ、私も! ライムでしゅ」


 ライムも慌てて、舌を噛み噛み合わせていく。

シアンさんが腰に手を当てて、


「琴守家の美少女ダイナーガールズです。どう!」


 鼎さんも呆気に囚われた顔をして、


「どうって。可愛いのはわかるけど、3人同じ顔してるしてるし』


 シアンが続ける。


「してるし、何?」

「化けたね美桜。あんた、私と同い年でしょ。まいりました!」


 シアンは、ふっと嘆息して微笑んでいる。


「聞き捨てならない言葉もあったけど、良いわ。わかれば良し」


 鼎さんも呆れている。


「今度、教えてちょうだいな。どうすりゃあ、可愛くなれるか?」

「いいわよ。レイヤーの'カナン' 復活だね!」


 鼎さんが慌てて、顔の前で手をヒラヒラさせて、


「やめてぇ、過去の傷抉るの」


 シアンさんの微笑みに影が刺す。


「私を無理矢理引き摺り込んだ張本人が何を言うの」


 そうだ、確か美桜さんをコスプレに誘ったっていう友人がいるって聞いてたんだ。守道さんの奥さんで鼎さんがそうなんだ。


「ところで」


 軽く咳をして、鼎さんは、


「ひとりは美華ちゃんでしょ。ということは、美鳥ちゃんかい。大きくなったね」

「ありがとうございます」


 美鳥はお辞儀をしながら答える。


「小さい時から見てるからね。すぐ引っ込むから、話した時は少ないけど」


 鼎さんに小さい時の癖を暴露された。


「今じゃ、3人揃えば美人の三つ子だもな。綺麗になったよ」


 褒めてもらえたと分かりにっこりの美鳥、慌てる美鳥、渋い顔の美鳥と表情がコロコロ変わって、見ていて面白いよ。

そこに、マゼンタが割り込んだ。


「今日は手伝いに来たんだけど、まずはデモンストレーションやってもいいかな」

「デモって何をやるの」


 鼎さんがマゼンタに聞いている。


「さっきまでレストランで撮影してたんですよ。それをここで」


 ライムが慌てる。


「ちょっと人前じゃ恥ずいよう。お姉ちゃん」

「何言ってるの。ライムのデビューでもあるんだよ」

「だから、余計恥ずいの」


 鼎さんは腕を組んで思案している。


「確かに、人手がなくて、ピンチだったのは事実。多少でも客引きになるなら、美桜たちも来たしお願いしようかな」

「えっー」


 ライムが抗議の叫びを上げる。

呆然と女性陣のやり取りを見ていた俺は、


「俺はライムのダンス見たいよ。いつでもー何度でも」

「一孝さんまで」


 ダイナーガールズのダンスライブが決まった。


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