第53話 スタジオ・フォレストハープ

 美鳥、いやライムが緑色をキーカラーにしているのに対して、奏也パパさんのカメラは、青をキーカラーにしている女の子にレンズを向けていた。

 青い生地に白の水玉模様のリボンで髪を止め、ポニーテールにしている。色以外、ライムにそっくりで驚いている。マシマシまつげの溢れそうなほど大きな目、リボンブラウスも目に鮮やかな青色。


「いいねぇ!そのポーズ、グッときちゃうよ〜、はい」


   ぱシィ


 ストロボか瞬く。


「もう一回お願い、視線こっちね」


 なんか、世界が違うって感じ。

 

 ちらっと赤い色が目の端に入る。視線を動かすともう一人いました。赤をキーカラーにしている子。

 キッチンカウンターに近いテーブルに体を預けて、ゆったりしている。チェアに座り、伸ばしている足の線が綺麗だ。

 白いストッキングが細くしなやかに魅せている。注視していると、


「一孝さん!」


 ライムの鮮やかに描かれた眉が顰められた。


「ごめん、ごめん」


 でも、ライムは両手の指を己の白い腿に這わせていき、


「じっくり見るなら、ライムの脚をどうぞ」


 思わず、傾注してしまったよ、

俺も頬は熱くなるし、ライムの耳も真っ赤になっている。


 すると、


「お熱いことで、ヒューヒュー」


 揶揄ってきた。でも、記憶にある茶化し方をする。


「その言い方って、美華姉?」

「だよー。今日は'マゼンタ'だけどねぇ。よろしくぅ」


 両手のひらをふりふりしながら、自分を紹介してくれた。


 という事は? 撮影されているのは、

 美鳥が緑でライム、美華姉が紅でマゼンタ、という事は、


「一孝くん、いらっしゃい〜。シアンで〜す」


 言いながらポーズを決めてくる。手を上に掲げて背筋を飛ばし、足先は前後に重なるようにずらして行く。立ち姿が綺麗だ。


「ビューティフル! My precious one!」


 カメラマンの奏也さんがカメラを動かし盛んにシャッターを切って行く。ストロボ光が眩しい。

 シアンは奏也さんにむけ、指先をふりふり、


「non non Darling! Call me 'Honey'」


 奏也さんはカメラそっちのけで、シアンに抱きついていく。感極まったのかな。キスされそうになっているシアンは指先を奏也さんの唇にあて阻止している。


「美桜さん」


 美華姉、美鳥のお母さんで奏也さんの奥さんの美桜さん! 御歳秘密⁈。

服の色が違うとはいえ3人とも髪型から顔つき、スタイルまで同じなんですよ。


 マゼンタは、ウゲェーとして顔を背けている。ライムは両手で顔を隠して俯いている。耳が赤いのは、さっきから継続中。


だけども気づいてしまった。美鳥もそうなのか、俺を見てくる。


「美鳥、今の会話って」


「「コットン」」


 2人で、顔を見合わせハモってしまった。

 そうだ、あの粘土フィギュアのコットンが言っていたんだよ。


『ハニーって呼んで』


と。


「ママって彼奴とも繋がりあるのかなぁ。そんなのは、嫌だなぁ」


 美鳥は、本当に嫌そうな顔をしてる。

あくまでもだけど、俺は想像した。


「多分だけど、結構、こんなやりとりを小さい美鳥の前でしてたんだよ。それを無意識に聞いてたんだね」

「それを彼奴が私の記憶から真似たということ?」

「そんな外れてないと思うよ」


 すると、ライムの口が呟く。


『それみよ』


 美鳥は、両手で口を隠して、頭をブンブン、降っている。否定してるんだ。


「私は喋ってない。彼奴よぉ〜」


 とうとう美鳥はしゃがみ込んでしまった。

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