第38話 on your mark SET

_________風見side__________



何日ぶりだろう、これといったこともなく1日が過ぎ、放課後になってしまった。

しかし、なんでだろう。胸が騒ついている。何が起こるんだろうーな。


「なあ、お前までバカに静かなんだが、どうなんだ? コットン」


あまりにも心配なんて俺はコットンに声をかけた。


コットンは先日に作った鏡を見ている。角度を変え、自分の顔の写り具合を見ているんだ。


「何もないのは平和の証拠。いいことではアーリませんか。美鳥も色々考えているみたいだし、いーんじゃないのか」


だめだ、こいつまで、気もそぞろになってる。



そのうちに、


「皆さん、廊下にでて、整列してください。体育館へ移動します」


号令以外で美鳥の声を聞いた。この2,3日は会話が殆どない。

俺、なんか嫌われることしたかなぁ。


昨日に続き、体育館に移動した。その中で、


「体操服を着ているのお前だけだよ。またパフォーマンスでもやるのか?」


 副委員長の桐谷に言われてしまった。確かに俺1人だけ着替えている。ましては今日は文化系の部活動説明会だ。運動するわけではない。


「これが終わった後の頼まれごとがあるんだよ。高梨…先輩からの」

「羨ましい限りだなあ、あの先輩からだぞ。それに昨日のラリーもすごかったしなあ」

「代わろうか?」

「滅相もない、役者が違いすぎるよ。ああいうのは見てるだけで充分、最後のはご褒美だしな。風見よくやった」


思いっきり肩を叩かれた。


「本人の前ではいえないね」

「だね」


不意に女の子の声が割り込んでくる。


「なんのこと」


 後ろから高梨本人が来た。今日は普通にブレザーにスカートだけどスカートからジャージのハーフパンツが見えている。桐谷と、がっかりのアイコンタクト。終わったらすぐに部活動を始めるのだろう。


「いえ、何も。高梨先輩キレだなーって話してたんですよ」

「あっ、ありがとうね」


 和かに話をしているが目つきが変わって、


「昨日のは、お墓の中まで持っていきなさい。ネタなんかにしたらお仕置きよ」

「「そっちもご褒美です」」


桐谷とハモった。


「ヴァカ」


  バレてたか。



「風見君、終わったらよろしくね。すぐ準備始めるから」


まともな顔に戻った高梨にまで肩を叩かれる。


「で俺は何を」

「あのヴァカのお守り、チョーと遊び、いや、試合をね」

「俺で良いのですか?2年試合から離れてますよ」

「それで、私とラリー続けられるんだから大したもんよ」

「高梨先輩の技量ならできたわけで」

「謙遜しない。兎に角見てあげて。あのヴァカのためでもあるんだから」


「あー、情でも……」


縋ろうとしたけど、

その後の言葉は続けてられなかった。高梨は真剣な顔をして俺を睨んできたから。


文化系なので、これといってアピールイベントのなく、淡々と一通り終わった。


司会が、


「これで部活動説明会を終わります」


「じゃあ、みんなぁ、ここで解散になりまぁす。気をつけて帰ってください」


 美鳥の声。しっかりいいんちょをやってるね。

と思いきやいち早く体育館を出ていくのを見つけてしまったょ。

 一年生が三々五々帰っていった体育館に、


「早くネット組み立てて」


 高梨の声が響く。さすが最上級生、貫禄があります。そのうちに体育館の出入口から彼奴が入ってきました。


「なんだ、明日菜。頼みがかるからって、来てやったぞ。水臭いではないか」

「あー、ありがとう」


 なんか高梨の返事がフラットになってる。


「風見君と試合をしてほしいんだ。あんたなら、どれだけ体が鈍ってるわかるでしょう」

「俺ぐらいの力量ならな。……なぁに風見と試合だと。なんであいつと試合しないといけないんだあ」


八重柿が吠える。まあまあと高梨が宥めていく。


「先輩としての度量を見せてほしい訳だよ、今後の資料としたいんだよ。お、ね、が、い」 


高梨のお願いで、ヴァカがニヤついた顔をする。


「かざみー、ありがたく思えよー。全日本選抜の力を見せてやる」

「ありあっとます」


 俺は姿勢を正して最敬礼をした。



__________美鳥side__________



今日一日、ここまで何もなく進んだ。

お兄ぃとも話ができないせいか、胸に秘める思いが騒つく。大きくなってる。

さあ、みんな。体育館に移動、移動。


「これで部活動説明会を終わります」

「じゃあ、みんなぁ、ここで解散になりまぁす。気をつけて帰ってください」


 立ち上がってみんなに告げていく。

退屈な説明会とが終わったと、うだうだしてるクラスメイトが、少しづつ動きだす。


「歩美、ごめんね。行くところあるから先に行くねぇ」


 私いといえば、ほぼ先頭でそそくさと体育館を出ていく。そしてトイレに併設されている化粧台の鏡に向かっていく。予め用意していたバックを開けて道具を取り出していく。


「さてと」


 鏡を見ながら前髪をクリップで止めて、洗顔ムースを使って洗っていく。吸水タオルで水気を取ってから、化粧水を使っていく。

手のひらに500円ぐらいの大きさでのせ、指で額、頬、顎、鼻とにつけていく。それを顔の中心から外に向かって伸ばしてプレス。指をつけて離すとミシッといった

、OK。

顔だけじゃなくて首、首筋にものせていく。その後は浸透するのを待つの。焦らない、焦らない。

 5分を過ぎた頃に違う容器を出す。その中の乳液を手のひらに10円硬貨ぐらいのせて広げていく。

初めは頬から、内側から外に円を描くように伸ばしていく。後は額、顎、最後にお鼻。なんか潤いを感じできたな。

これで下準備終わり。外すのもあれなんでクリップはつけたまま、トイレを出て階上へ登っていく。


 お兄ぃは試合の時はこんな感じなのかな、コートにいく高揚感。


 すると、

 あっ、また見かけてしまった、あの3人の男たち。なんか私を見てヒソヒソ。視線を合わせないように階段を登っていく。階段を登りお姉様方がいる教室へ。


ドアを開けると皆様方がいらっしゃいます。 


「お待ちしておりましてよ。さあ、始めていきましょう。こちらにお掛けなさってくださいな」


 胡蝶様は鏡の置いてある机を指し示してくれた。奈央様が椅子を引いてくれる。由乃様がコンパクトやらペンシルやらブラシやらを机の上に用意して頂いてくれている。私は椅子に座って机に置いてある鏡を見た。


「これって3面なんですね。私は丸いの使ってます。LEDライトもある。ハリウッドミラーでしたっけ」


胡蝶様は、ニッコリと答えてくれる。


「良くご存知でいらっしゃる。さあ始めましょう。昨日は手早くBBクリームを使いましたが、今日はしっかりと化粧下地からやっていきましょう」

「はい」


さあ、始めようと!

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