第21話 スローライフとは?

久々に女性から電話があった、どうやら友人を伝わって届いた話はとんでもないことになっていた。

私は秩父の里山でスローライフを満喫しているらしい、そんなとんでもないデマが広がっていたのだ。


「広い家で書斎やトレーニングジムもあるんだって、しかも湧水でコーヒーなんか入れて悠々自適な生活らしいじゃん」

完全に誤っ情報が伝わっている、これには苦笑した、しかも見に行きたいと言われ断ったが必死に食い下がられた。


あまりにももったいつけてるような言い方をされたので、カチンと来て事実を認識してもらおうと来る事を承認する。現実を見てみれば良いのだ、あとはどうなっても知らない。

当日駅まで愛車の古い軽トラックで迎えに行った、しかもひげは伸び放題だし汚い格好だ。

彼女はかなりドン引きしたのだが、「スローライフになるとこんなになるんだね」と変な納得をした。


自宅でのもてなしはむずかしいので、田舎で人気のあるお店で昼食をとった。

すると「いいなあ、こんな自然の豊かな所でスローライフなんて」とまだ現実を理解できないようだ。


自宅に着くと普通の家なので「ふーん、意外に見た目は普通何だね」などとおっしゃった。

書斎はと聞かれ二階へ案内した、子供の勉強部屋風の棚がいくつかあり、雑然と本が並んでリサイクルで手に入れた机や椅子が何の統一感も無く並んでいる。もちろんそこにセンスのかけらもあるわけはない。


トレーニングルームも、マットと古い自転車風の器具があるだけ、センスの活かしようもない状態だ。


コーヒーは美味しいと言ってくれたが、すでに帰りの電車の時間を調べている。

「おうちが広くて部屋が空いてるなら泊めてもらおうかな」などと言っていたが、東京に用事を思い出したらしい。素直にこれはひどいと言ってくれたほうがまだすっきりするが、彼女はいつかは田舎で暮らすのもいいなあと言いながらも

急ぎ気味に東京へ帰って行った。

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