落ちぶれて見た!
紫恋 咲
第1話 落ちぶれ始める
日々感じていたのは、時代の流れが急加速し置き去りにされていくような感覚だ。
変わり映えの何一つしない私の部屋の中で。パソコンの画面の中だけは急速な変化を遂げている。
世の中はアナログからデジタルに変わり、IT時代となってさらに急加速する。
仕事では大切なことは電話で直接話すように言われてきた、しかし今は確実にメールで残すように言われる。
昨日までの常識が今日通用するとはかぎらないのだ。
時代が変わると価値観も大きく変わってしまう、「これからどうなるんだろう?」、漠然と、しかし確実に不安が迫ってくる。
問題なのは、時代の流れと自分が生きている時間の流れが、上手く折合いがつかない事だ。
まだ私が若いのならば、加速するテクノロジーの波に乗り色んな事に挑戦できるかもしれない。
しかし人生も半ばを過ぎた私には、とても付いて行くような気は起こらない。
どちらにせよ、今後時代に取り残され落ちぶれて行くのはほぼ明確だ。
近ずく長い老後も、私の弱い心に重くのしかかってきた。
逃げ出したいこの現実から、そんなことを思っていると、それならいっそのこと自分からベストな落ちぶれ方を探そう、そして生きる気力だけは無くさないようにしようと考えた。
「そうだ、山籠りして仙人になろう」そんなバカな事を思いついた。
実際に仙人になれるわけはないが、このままじっとしているのも時間の無駄だ。
行動を起こさなければ何も始まらない、私は早速適当な山里を探し、仙人を目標に新たな生き方を模索することにした。
「落ちぶれてみた」を実践し結果を出そう、そう思うといてもたってもいられなくなる。
「私の人生のネクストステージは山の中だ」勝手に思いこみ、勝手に進める。
なんと安直だと思ったが、じりじりと迫ってくる老後に対して、何か行動を起こさなければと思ったのだ。
最近、人の人生は百年と言われるようになった、ならば私はまだ折り返し地点を通過したにすぎない。
とりあえず、そう思うことにして一歩踏み出すことにした。
もしあなたが、「落ちぶれてみた」を読んで、自分の安定と幸せを実感したいのであれば、その期待は裏切られないと思う。
もしあなたが、落ちぶれたらどうなるんだろう、いつ自分に降りかかる緊迫感をお持ちなのであれば、なるほどこんな生き方もあるのかと参考になるかもしれない。
もしあなたが、田舎暮らしをするために危険を回避したいのであれば、それも多少参考になるかもしれない。
もしあなたが、スローライフ等を楽しみたいのであれば、この話しは全く役に立たない。
もしあなたが、これからの老後をどんなふうに生きようと考えているのであれば、同じ悩みを持って田舎で生きようとする友人が一人増えたと思っていただければ良いかと思う。
五十も半ばの独り者のおやじが、落ちぶれて田舎で生きて行く話しなので、面白くはないかもしれない。
しかし一つ言えるのは、この話を知ることによって、自分の人生に対する物差しがひとつ増る。
そして、自分のポジションや自分の幸せが確認でき、普段の生活に活気が出てくる可能性は充分あると思う。
自分の今の幸せは、他にこんな悲惨な人生があるのか、そんな事を知らなければ気付かない物かもしれない。
是非読んで、今の自分の立ち位置や置かれている状況が素晴らしい事を、再認識してみてはいかがだろう。
それでも、自分が幸せと感じないのであれば、それはあなたの人生の転機かもしれません。
私のように、自由と言う恐ろしい孤独と恐怖の寂しい地獄に落ちて、這い上がる努力をすることをお勧めする。
なお、この本を読んだから不幸になると言うような事は決して無いのでご安心を。
読んだ後、ホッとして自分の人生が幸せであると感じられる事を、心から願っています。
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