第2話厭な会社

自宅に戻ると、柳瀬はシャワーを浴びトランク一枚の格好で、冷蔵庫から缶ビールとチーズを取り出した。

今夜は何も食べたくないが、缶ビールとチーズたけの夕食でベッドに倒れ込んだ。

そして、翌日の朝の6時には目が覚めた。

歯磨きをして、髭を当たり、朝食はアイスコーヒーだけで会社に向かった。

柳瀬は着替えると、外に出た。

毎日、15分最寄駅まで歩き厭な満員電車に乗り、そこから長い厭な坂を上り、かの厭な会社の社員通用口の扉を開いた。

まだ、利用者は来ていない。

山竹さんがいた。

「おはようございます」

と、柳瀬が言うと

「おはよう。次期サビ管」

僕はガラスの精神力なので、

「山竹さん、また、引き継ぎお願いいたします」

「ヤル気満々ね。柳瀬君も社長の言いなりになっちゃダメよ」

「……はい」

現在、朝8時。利用者が施設に集まり出すのは9時からだ。

柳瀬はある利用者が無断欠勤しているので、会社の規定で解雇する話や、仕事の営業先のリストを渡された。

山竹さんは、60歳。まだまだ、働けるが「あさがお」に愛想が尽きたらしい。

少しして、スタッフの葉山いずみが出勤してきた。

「おはようございます」

と、葉山が言うと

「おはよう」

と、2人は返事した。

実は、柳瀬と葉山は会社に秘密で交際していたのだ。

葉山は、元気の無い柳瀬を見て、仕事終わりに、夕食を誘った。

もちろん、LINEで。

『柳瀬はお願いします』と返信した。

柳瀬は仕事はほとんど3人のスタッフに任せ、山竹の引き継ぎを細部まで引き継いだ。

その時だ。

「キヤー」

悲鳴が聞こえた。作業場へ行くと宇野さんが泡を吹いて倒れていた。

『てんかん』

の、発作である。直ぐに社内看護師を呼び手当てした。たいした事はなかった。

その一連の作業を山竹サビ管が指揮した。

そうこうしていると、利用者は15時に帰って行き、社員は17時まで仕事をした。

そして、会社から離れた焼き肉屋の入り口で葉山を待っていた。

時間を5分遅れて、葉山が現れた。

「ゴメン、タクヤ君。待たせたね」

「いや、さっき着いたとこ」

2人は焼き肉屋の暖簾のれんをくぐった。

2人はまずは、生ビールとタンを注文した。

今夜は、長い夜になるだろう。



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