ゲームスタート? からの強襲
『ゲーム開始前に、1ラウンド目の先行と後攻を決めましょう。
こちらにある6枚のカードを一つめくってください。大きい方が先行です』
「悩んだって仕方ないから、これでいいや。4だ」
「確かにこればかりは純粋に運ですしね。2です」
『ではマスターが先行としてゲームを開始します。
2ラウンド目以降は直前のラウンドの敗者が先行となります。
ドローとなった場合、後に解答した側が次の先行です』
===ROUND 1 先行:ディトリエ===
練習の時と同様に、
A
[?]B[黒クラ5]
C
『手札をお配りします』
GMの言葉と同時に手元に現れる手札を見る。
(<ハートの2>と<ハートの3>か……。
ヒントを絞り込む素材としては微妙かもしれないわね……)
手札を見ながらオフィーディアが思考を巡らせていると、ディトリエが新たに手札に加わった一枚を確認しながら、声を掛けてきた。
「あたしさ、恵まれた環境でお高く纏まっている高慢キチな奴が、ぐちゃぐちゃにその顔を歪ませ、助けてくれと泣いて懇願する姿見るの結構好きなんだよね。そういう顔を写真に撮ってコレクションしてるんだ。これが楽しくてね」
「あら、悪趣味でいらっしゃるのね」
「お前もそのコレクションに加えてやるって話してんじゃんよ」
そう言ってディトリエは<ダイヤの1>を一枚場に出した。
「こいつをAレーンだ」
A[赤ダイ1]
[?]B[黒クラ5]
C
レーンを増やす場合、それはほとんどヒントにならない。
だが、レーンにカードを重ねて出てくる数字によっては相手に絶大なヒントを与えかねないのだ。
だからこそ、初手はお互いにレーンを増やすのが定石になるだろう――と、オフィーディアは考えていた。
だが、直後のディトリエの行動によってその定石だと思っていた考え方はたやすく覆される。
「解答するぜ、GM」
不敵に笑うディトリエ。
それを見ながら、オフィーディアは目を見開く。
(なにを……言っているの……ッ!?)
解答。そう解答するとディトリエは言ったのだ。
『かしこまりました。してカードはいかに?』
はっきり言って、ほぼノーヒント。場のカードと自分の手札を除外した上で運に任せるにしたって、確率は1/20。
練習の時のように、選択肢が絞られているとはいえない状況だ。
(解答……ですって?
ハッタリ? 確かにこのゲームではハッタリやトラッシュトークは有用です。とはいえ、この盤面で使えるようなモノではないはず……!)
解答ミスは自分の手札を公開した上で、相手にターンを譲ることになる。
それを思えば、リスクが高いばっかりで、リターンが釣り合っていない行動だ。
(なのに、このタイミングで解答をするなんて……!)
理解が追いつかない。
だが、それではダメだ。
考えろ。どうしてディトリエはここまで自信満々に解答と宣言できたのかを。
考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。
それが分からなければ、自分には勝ち目がないのだから――……ッ!
「伏せカードの正体は<ダイヤの2>だ」
外れろと祈る自分と、きっと正解だと確信している自分がいる。
そのことを自覚しながら、オフィーディアはGMの返答を待つ。
返答を待ちながらも思考は止めない。
僅かな時間だというのに永遠にも感じる。
そんな時間の海に溺れそうな感覚の中、ぱんぱかぱ~ん! とどこからともなくファンファーレが響いてきた。
『マスター。正解でございます』
「うし」
小さくガッツポーズをするディトリエのことは無視して、オフィーディアは浮かび上がるカード、自分の手札、相手の手札をつぶさに観察する。
(手触りはふつうの紙のカード。
イカサマを仕込むにしても、ラウンドが終われば魔法か何かでカードは回収されるし、同じようにシャッフルされるから、仕込むにしたって……)
そこで、ふと脳裏に引っかかるものがある。
(ふつうの……紙のカード?
もしかして――それは、アリなの?)
『それでは一度カードを回収致します』
考えている時間はない。
モノは試しだ――と、オフィーディアは手札が消え失せるギリギリのタイミングでそれを仕掛けた。
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