第58話 転移の真実②


「私に並ぶほどの力を持つ勇者が悪魔化しちゃったんだもん! そりゃあ~もうね大変なことに~」



:勇者が悪魔になったのかよ


:意味わからん


:そういえば人間が魔力を浴び過ぎたら天族と神族と悪魔族になるって話は聞いたけど……てことは勇者は死んだのか?



「いえ、悪魔化は生きている間にも起こりえることです……しかし、勇者に関しては悪魔化にならないはずなのです」


 そう、世界を守る。という使命を持っている純粋な心の勇者が悪魔になるなど、今までの歴史を見ても異常なことなのだ。


「そこなんだよねー! さっすがフィナリアちゃん! そこで、セレフィスト様に聞いたんだ! そしたら……勇者は元異世界人で、もしかしたら悪の心を持っているのにも関わらず、勇者になってしまったって言ってた! おかげで勇者+悪魔の力が合わさって大変なことになってる!」


 しまったって……そのように軽く言わないでほしい。

 とはいえ、今回は魔王様は関係ないということがこれではっきりした。



:なるほど……


:とはいえ、勇者が悪魔になるなんてどこの小説にもないだろ……


:↑闇落ち勇者ってことじゃないのか?


:闇落ちチーターみたいなもんやろ


:↑わっかりやす!


:チーターよりたち悪いんだよなあ……



「そういえば勇者ってカイチ・ユキムラだったわよね! あの勇者パーティー、私の国にも来て嫌な奴だったから、フィナリアに頼んで追い返したわ!!」



:王女強すぎて草


:スラム国は勇者を追い返せるのか……


:↑フィナリアがいるからな


:待て……カイチ・ユキムラって行村嘉一ゆきむらかいちじゃ?


:あー!! あの自殺した連続殺人犯の?


:となると……話はつながるのか?


:確か『お前ら!まだ俺は あきらめてないからな!!』って痛いこと言って自殺したよな


:異世界で暴れてやがる……



 どうやら、この世界からの異世界人であっているらしい。

 それで元殺人犯……辻褄はあった。


「つまり、行村嘉一がこの世界から転生して、カイチ・ユキムラとして勇者になり、悪の心をもとから持っていたから簡単に悪魔化して魔族を支配し、世界を滅ぼそうとしているということですね」


 わたしは、今考えていることをとりあえず話した。

 とはいえ、どうすればよいのかはわからない。


「よくわからないけど、セレフィスト様の準備ができるまで、いつも戻りここで生活しろってことでしょ?」


 スメラ嬢の言葉に納得する。

 

「まぁ、そういうことですね。ということで皆さん私たちはまだまだこれからも動画投稿やライブ配信を続けていきますので、どうか応援よろしくお願いします!」



:おう!


:もちろんさー!!


:魔王もこれから一緒!?


:アミフォリアを見るためだけに登録した


:スラム国最高!!



「それでは皆様また次の動画やライブでお会いしましょう」



:お疲れ! 最後のコラボ動画待ってるよ!!


:おつー!!


【夜亜きらり✔】:お疲れ!!


:↑いんのかよ!!


:突然現れるカラミア学園


【猫鎌ヒカリ✔】:おつかれにゃー


:やっぱりこの2人かwww



 そんなチャットが流れてい行く中、配信を切るのであった。


「まさか時間制限あったんやね……」


 奥からみさきさんが歩いてくる。

 表情は若干悲しそうである。


「私も今日知りました。ですが、まだ時間はあると思います」

「ええ! まだ私たちはみさきにお礼をしていないわ!! このままでは帰れないわよ!!」


 私の言葉にディア王女も賛同している。

 帰れることが判明したのは嬉しいことではあるのだが、この世界に居たいと思ってしまっているのも事実……


「そうやね! 私もこれからサポートするから、どんどん頑張ってってな!」


 みさきさんの言葉に私たちは大きく頷いた。

 ひとまず事務所での配信は終わる。


 これから家に帰り、明日のコラボ動画撮影に向けての打ち合わせがあるということで、私たちは早速家に帰った。

 家に帰り、パソコンを開く。

 今回は初めてのリモートでの打ち合わせらしい。

 ちなみに、私とディア王女とスメラ嬢とみさきさんは、お互いの声が入るのを防ぐため、別々の部屋で繋げている。



『やっほー! 聞こえてる!?』


 画面に陸海空さんの顔が見えた。

 ほかにも何画面と分かれており、そこにはディア王女たちの顔も写っていた。

 こんな感じになっているのか……

 この世界の技術は本当にすごい。


『今回の打ち合わせでは~皆さんに次回の動画で【カラミア学園運動会】に参加してほしい。ってお願いしに来たんだけどどうかな!』


 相変わらず陸海空さんは元気である。

 ちなみにカラミア学園側には陸海空さんしかいない。

 

「運動会ですか? 基本どのようなことをするのですか?」


 私はその場で質問する。 

 異世界にはない単語だったのでわからなかった。

 

『えっとね! まずブロックっていうグループに分けて、綱引きとか、徒競走、2人3脚、ダンス、とかいろいろな競技で対決するって感じかな! 今回ね、フリーライバーたちにも声をかけてるから【カラミア学園合同大運動会】としてやるつもり! これで了承をもらったらブロック分け、練習、などで約……そうだねぇ……大体3か月は必要になるかな?』


 なるほど……

 つまりは全員で運動対決と……

 闘技場での模擬戦闘大会みたいなものだろう。

 それのアスレチックというか……もっと安全にした感じかな。

 ならばまぁ、ディア王女でもスメラ嬢でもできそうではある。


「私は構いませんが、ディア王女、スメラ嬢様、アミフォリアさんはどうしますか?」

『私は全然大丈夫よ!! むしろやってみたいわ!』


 まぁ、ディア王女ならばそう言うとは思っていた。

 後はスメラ嬢とアミフォリアだけだ。


『私も別に大丈夫だけど』

『全然いいよー!! かっこいいところを見せちゃうもんねー!!』

『私も参加してええなら参加するでー』


 どうやらスメラ嬢も、アミフォリアも、みさきさんもやる気満々らしい。

 

『ありがとう!! それじゃあ、1週間後の金曜日私たちの事務所、前回異世界勉強した部屋まで来てもらえる? そこでブロック分けと競技を決めるから!』


 1週間後の金曜日……

 特に予定はないので了承することにした。

 そうして今回のリモート会議は終了するのであった。

 とにかく、カラミア学園合同大運動会……とても楽しみである。

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